出版社内容情報
古代の物語は、作者と読者が自由に入れ替わり加筆や修正が行われ「成長」する。『源氏』の構造から成長過程を解き明かす知的興奮の書。
内容説明
原稿用紙に換算して二千五百枚にもなる長大な物語を、本当に紫式部が一人で書いたのか―文体や登場人物の扱いなどに着目し、錯綜する展開を解きほぐすことで見えてきたのは、光源氏死後の話である「宇治十帖」のみならず多くの部分が、読者によって自由に加筆や修正が行われ「成長」していった事実だった―。
目次
序の章 作者としての紫式部
第1章 物語の不思議な構成
第2章 巻々成立への関心
第3章 紫の君の物語
第4章 本格的な物語の構築
第5章 「上」と称せられる紫の君
第6章 紫式部の源氏物語
第7章 朝顔の宮追従
第8章 紫の物語の終局
終章 男性作者の登場
著者等紹介
西村亨[ニシムラトオル]
1926年東京の生まれ。慶應義塾大学文学部卒業。在学中から折口信夫に師事し、古代学の継承と王朝の和歌/物語の研究に努める。慶應義塾中等部教諭を経て、70年に慶應義塾大学文学部へ移籍。74年に教授となり、現在は名誉教授。文学博士(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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佐島楓
16
源氏物語本文を読んだ直後に読むのがおすすめ。内容がするする頭に入ってくる。宮廷での暮らしも心穏やかであれば楽しかったのかな。式部たちが雑談しながら製本している姿が目に浮かぶようだ。2012/04/22
雨巫女
9
確かに、印刷物ではなく、書き写したため、ありえるし、登場も、アドバイザーはいたのかも、しれない。2010/09/16
うえ
6
「注意しなくてはならないのは、源氏物語という作品に対する評価が高いことによって、作品と作者の名前が結び付いたことだ…物語に関する限り、源氏物語以前に作者の名がはっきりと後世に残ったものはない。竹取物語も伊勢物語も作者は誰か伝わっていない」「帚木の巻の冒頭部分だが…源氏物語の中でも難解な文章のひとつなので…本書では源氏物語に対する深い理解を示している折口信夫の説を拠り所としたい…折口が…論じ引用している論中の本文を借用したが、本文の用字や清濁・句点など、漢字に略字を用いた以外はすべて折口全集の本文に従った」2018/02/19
みに
3
あらすじを説明した部分も多く、目新しさというよりは以前から言われていることを述べている点が多いので、入門に良いのでは。2010/09/09
なかがわみやこ
3
著者の主張を述べた物、特に新書は端的にわかりやすくまとめた物が多いので、「なるほど」と目からウロコになるか、「えー?」と首を傾げるかのどちらかなのですが、これは圧倒的に後者。単に思い過ごしなのでは?根拠が薄くてなんでそんなことを考えたのかさっぱり理解できず。フィクションの「千年の黙」の方が上。別の著作もいまひとつだったので、この人とは合わないらしい。2010/03/25