出版社内容情報
綿密な取材によって戦史小説、歴史小説に新境地を拓いてきた著者の"史実"への姿勢を、失敗談を交えて綴った決定的取材ノート
内容説明
「戦艦武蔵」「深海の使者」などの戦史小説、「長英逃亡」「桜田門外ノ変」「天狗争乱」「生麦事件」など幕末に材をとった歴史小説を精力的に発表してきた著者は、その綿密な取材と細部へのこだわりでも知られる。作家はどのようにして素材と出会うのか、執筆にあたってはどのように調査を進め、いかにして歴史の“真実”に肉薄するのか―作家の史実への姿勢を、失敗も含めて率直につづった、とっておきの「取材ノート」。
目次
「破獄」の史実調査
高野長英の逃亡
日本最初の英語教師
「桜田門外ノ変」余話
ロシア皇太子と刺青
生麦事件の調査
原稿用紙を焼く
創作雑話
読者からの手紙
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
SOHSA
36
歴史における事実とはなにか、どのようにして解明するか、断定するか、極めて難しい問題ではある。時代小説とは言え、小説というフィクションである以上、時代考証に明らかな誤りがなければそれ以上の精密さはなくても良いと思っていたが、著者の考えはそうではなかった。可能な限り史実を究明し、その上で登場人物の心理を描く、そうした真摯な意気込みが伝わってくる。それが作品に迫力と趣きを与える。しかし、そのための労力は想像を遥かに超えるものだった。読み手として真剣を突き付けられた思いだ。感服した。2014/09/25
ヨクト
20
吉村作品のその圧倒的なクオリティはこの本で明かされる綿密な下調べにあるのだ。ネットが広まる前の時代、戦争の傷がまだ癒えぬ時代、各地に足を運び、資料に目を通し、忘れられてしまいそうな物語を書き繋いだ。現実は小説より奇なり。史実に沿った吉村昭の作品は小説よりも熱い。2013/08/28
bluemint
17
吉村昭は好きな作家なので、その取材の考え方や裏話が読めて楽しかった。思っていた以上に資料を求めて、原典に当たっており、当事者にも会っている。しかし、目撃者といえど勘違いや長い年月を経る中での変質が起こることも書いている。少なくとも二人以上の証言と記録した文章が必要。また、地道な研究を続ける無名の郷土史家にも尊敬と感謝の気持ちをわすれない。2018/06/13
ikedama99
12
筆者が、自分の本のあとがきに書いたものなどをまとめたもののようだ。読んだ本もあるのだけど、その時はあまり意識しなかったが、数冊読んだ後だと、なるほどと思う内容でもあった。現場や取材を本当に大事にした人だと思った。もっと他の作品を読んでみたいと思うようになった。2017/12/29
浅香山三郎
9
記録文学のジャンルの第一人者だつた吉村昭さんの随筆。私は、吉村さんの小説は残念ながら読むきつかけがなく、まだ読んでゐない。ただ、歴史上の出来事をかなり正確に書く作風といふことは聞いていたので、興味深く読めた。 一次資料の読み込みと、現場を歩き、主に幕末の出来事の関係者(当事者の子孫など)にあたるといふ綿密さは、調べる目的が違いこそすれ、歴史学者よりもある意味徹底してゐるかもしれない。 書く素材に対する認識が不十分で、書き溜めた原稿を燃やしてしまふ話、聞き書のみに依存して書く危険性の話等は、示唆に富む。2016/04/23
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