出版社内容情報
作家として充実を極めていた最中に亡くなった向田。貧しいけれど懐かしい、豊かだけれど淋しい“昭和”がその文章から浮かび上がる。
シナリオ作家、小説家、エッセイストとして華々しい活躍をしていた最中に不慮の飛行機事故で世を去った向田邦子。彼女が人気ドラマ「寺内貫太郎一家」のシナリオを書いていた頃、そして大病をへて記念碑的第一エッセイ集『父の詫び状』を発表する70年代半ばから81年の事故直前までのエッセイ三十五編を採録する。幼いころのしんみりする思い出を描いた名品「ゆでたまご」「お弁当」、誰もが我も、と思い当たる節のある失敗談「ポロリ」、納得の男性観察「パセリ」など、身の回りの出来事が切れのよい文章で切り取られ、ほのかに哀切な読後感を残す。今読んでも、何度読んでも、日本人の琴線に触れる傑作随筆ぞろいです。
目次
第1部 一九七四~七七年(テレビドラマの茶の間;寺内貫太郎の母;名附け親 ほか)
第2部 一九七八~七九年(隣りの神様;草津の犬;マハシャイ・マミオ殿 ほか)
第3部 一九八〇~八一年(襞;お弁当;職員室 ほか)
著者等紹介
小池真理子[コイケマリコ]
1952年、東京都生まれ。成蹊大学文学部卒業。96年、『恋』で第114回直木賞を受賞。2006年、『虹の彼方』で第19回柴田錬三郎賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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marumo
26
大好きな「字のない葉書」「マハシャイ・マミオ殿」がある!あぁ、やっぱりいいなぁ。「お弁当」は佐藤愛子だと思い込んでいたわ。現代の男女平等感覚に照らすとなんだか釈然としないものもあるし、倶盧病で死んだライオンの話は個人で御しきれない野生動物を飼おうとする人の無神経に怒りを覚えたけれども、名文は名文だ。当時向田邦子が40代だったことに胸をつかれる。この方と自分をひき比べるのも愚かだけれど、なんという成熟ぶり。我が身の幼稚さに冷や汗が出た。2019/03/14
kieth文
23
小池真理子さんの選による。 この文春文庫シリーズは2作目(幸田文さんに続く) 今回も本当に読んでよかった。私の周りには向田邦子さんに心酔している方が多くて私は逆に敬遠しがちだったのだ。全く無意味な牽制だった。父様との云々はまた自分事も振り返って感慨深かった。気取らない気負わない人間らしさをこんなに表現できる人もなかなかいないと思う。2024/07/23
fu
23
選りすぐりの随筆だけに、印象に残る面白いものが多い。細切れの思い出をつなげて、いつの間にかひとつのテーマに纏られてゆく。車窓から見えた木造アパートのライオン、愛情深いのに不器用ですぐ怒る昭和の父親、外出着より高級な家で着る勝負服など。「ヒコーキ」と紙ヒコーキのように書くほど、飛行機に対して信頼を持っていなかった向田さんは、将来を無意識に感じとっていたのだろうか。痛ましい。2015/10/24
Shoko
12
所収のエッセイのほとんどは既読のはずだが、やはり向田邦子はいい。編者・小池真理子氏による序文は、その魅力を「私たちは向田邦子の文章を読んで、人間のにおいを嗅ぎとる。」と見事に言い当てており、深く腑に落ちた。特に「どのページをめくっても、私たちは人間が等しくもっている、愛すべき人間くささを目の当たりにして、どういうわけか、深く安堵するのである。」という一節には、「そうそう!その通り!」と、膝を打ちたくなる。市井の営みを見つめる作家の柔らかな視線は、可笑しな話や滑稽なエピソードの底に、→2026/01/31
ほうき星
11
読後また読みたいと思う本がある。文中の中に惹かれる言葉達があったとき。書き留めておくこともあるけれど、幾つもあったときは、手元に置きたい。その作家の他の作品も読みたい。向田さんはそういう方だった。エッセイストとして、父の詫び状等々書かれているが、飛行機事故でなくなり本当に残念でならない。事故のあった日は夏で、夕方、既に蜩が鳴き始めていたのを思い出した。2014/04/09




