出版社内容情報
200年の間、固く閉ざされていた扉。
それはフェノロサと岡倉天心の手によって開かれた――
飛鳥時代に聖徳太子の姿を模して造られたと言われる、
法隆寺夢殿・救世観音像。
その厨子は鎌倉時代以降、固く閉ざされ、
扉を開けば直ちに仏罰が下ると信じられていた。
「金のために秘仏を見せるというのか」
「支援がなければ、法隆寺はもう保てません」
国内では廃仏毀釈の嵐が吹き荒れ、
しかし、欧米では東洋美術が評価され始めている。
近代化と伝統の狭間で揺れる明治時代に、
秘仏開帳に関わったものたち、それぞれの思いとは。
直木賞作家が描き出す歴史群像劇の傑作。
内容説明
フェノロサと岡倉天心によって開かれた、法隆寺・夢殿の扉。秘仏・救世観音像の微笑みに、彼らが見たものとは。近代化と伝統の狭間で揺れる人々の葛藤と矜持を描く傑作歴史小説!
著者等紹介
永井紗耶子[ナガイサヤコ]
1977年生まれ、神奈川県出身。慶應義塾大学文学部卒業。新聞記者を経て、フリーライターとして雑誌などで活躍。2010年『絡繰り心中』で小学館文庫小説賞を受賞し、デビュー。『商う狼 江戸商人 杉本茂十郎』で20年に新田次郎文学賞を受賞する。23年『木挽町のあだ討ち』で山本周五郎賞、直木賞を受賞。同年『大奥づとめ』で啓文堂書店時代小説文庫大賞を受賞した(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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さっちん
5
タイトルに魅せられて、速攻購入しました。法隆寺夢殿の秘仏、救世観音の開帳に関わった6人のそれぞれの思い、人間模様が一章ごとに重ねられています。(フェノロサ、岡倉天心、写真家の小川一真、文部省にいた九鬼隆一、法隆寺の当時の総代千早定朝、明治5年最初に「壬申調査」で秘仏を開けた町田久成)のそれぞれの思いが一章ごとに重ねられています。この人たちの後の時代にも法隆寺は、壁画焼失などの苦難を乗り越えて、世界遺産の今があり、私たちは、望めば救世観音を拝観できる時期があります。この先千年も守り継がれますように。2025/01/14
Tatsuo Ohtaka
4
明治時代に法隆寺夢殿の秘宝・救世観音像を収めた扉が、政府の方針で開かれた。その現場に立ち会ったフェノロサや岡倉天心など、それぞれのその後を描く。とても面白く読めたのは、主役が救世観音像だからかな?2025/01/11