内容説明
金沢はひがしの茶屋街、置屋「梅ふく」の芸妓・朱鷺は、7歳の頃に売られてきた。同じ歳で双子のように生きてきたトンボや女将をはじめ、個性的な梅ふくの面々に支えられ、いまは朗らかに逞しく一人前の芸妓に成長している。そんなある日、朱鷺は密かに胸に秘めた相手・浩介から所帯を持とうと告げられる。花街の外で生きる―。そんな選択肢があるなど考えもしなかった朱鷺は嬉しい反面、養っている家族のこと、トンボら、梅ふくの仲間のことなどを想い逡巡もしてしまう。さらに思いもかけぬ障害が立ちはだかり…。思うに任せぬ境涯のなかでしなやかに生きる女性たちを描く、渾身の連作長篇。
著者等紹介
唯川恵[ユイカワケイ]
1955年、金沢市生れ。銀行勤務などを経て、84年「海色の午後」でコバルト・ノベル大賞を受賞し、作家デビュー。さまざまな女性たちの心に寄り添う恋愛小説、エッセイで多くの読者の共感を得ている。2002年『肩ごしの恋人』で直木賞、08年『愛に似たもの』で柴田錬三郎賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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starbro
175
唯川 恵、3作目です。金沢出身の著者が、金沢芸妓の生き様&哀しみを描いた連作短編集、オススメは、表題作「おとこ川をんな川」&「かそけき夢の音」です。 私は、以前金沢芸妓のお座敷遊び体験をしたことがあるので 、親近感が湧きました。 https://www.kanazawa-kankoukyoukai.or.jp/article/detail_26.html https://books.bunshun.jp/articles/-/94812024/11/22
いつでも母さん
139
昭和の初めの金沢花街・置屋「梅ふく」を舞台に芸妓・朱鷺とトンボの物語。2人の生い立ちとそこで生きる女たちの悲しみと逞しさ。芸妓として一人の女として、捨てたもの、掴んだもの・・そして守るもの。7話の連作、特に表題作になっている1話目と最後の話が好い。切なさと、意地と、覚悟がとても好かった。金沢言葉が少し理解しきれなくはあったが、雰囲気で読んだ(笑)2024/12/06
machi☺︎︎゛
88
昭和初期、金沢の花街の置き屋「梅ふく」での話。朱鷺ととんぼの2人の芸妓がメインに進んでいく。ここではいろんな事情で売られた女の子達が働いていてそれぞれに幸せをつかんでいく過程が興味深く楽しめた。その土地の言葉や時代背景は古いけど唯川恵さんの言葉は分かりやすくスラスラ読めた。登場人物みんなが個性が強く男勝りで読んでいてスカッとする場面もたくさんあった。2025/01/17
きょん
47
金沢の町を支える交わらない二つの川。朱鷺とトンボを軸に芸妓の世界に身を置く女たちの悲喜こもごも。報われぬ恋やままならない結婚。芸妓として生きていくしかない女たちの覚悟が切ないけれど、決して暗くならず凛とした姿が前向きでいい。2024/12/17
糸巻
30
大正から昭和に代わった金沢の花街・置屋〈梅ふく〉を舞台に、2人の芸妓・朱鷺とトンボの視点から描く連作長編。初めて知る世界とそこで生きていくための定め事に興味は湧いたが、幼い頃に親の借金のかたに売られてきた女たちの生き様に遣る瀬無い思いを抱かずにいられない。好き合う相手との別れの描写が辛過ぎて絶対に幸せになって欲しいと願いながら読み進めた。だけど私が思う以上に朱鷺とトンボは逞しい。2人の幸せは『旦那』や男によるものだけではなかった。守るべきものの多さに覚悟を得て2人は増々強く生きていく。2024/11/10