出版社内容情報
第171回芥川賞候補作。
「俺を転売して下さい」喉の不調に悩む以内右手はカリスマ”転売ヤー”に魂を売った? ミュージシャンの心裏を赤裸々に描き出す。
主人公の以内右手は、ロックバンド「GiCCHO」のボーカリストだ。着実に実績をつみあげてきて、ようやくテレビの人気生放送音楽番組に初出演を果たしたばかり。しかし、以内は焦っていた。あるときから思うように声が出なくなり、自分の書いた曲なのにうまく歌いこなせない。この状態で今後、バンドをどうやってプレミアムな存在に押し上げていったらいいのだろうか……。
そんなとき、カリスマ転売ヤー・エセケンの甘い言葉が以内の耳をくすぐる。「地力のあるアーティストこそ、転売を通してしっかりとプレミアを感じるべきです。定価にプレミアが付く。これはただの変化じゃない。進化だ。【展売】だ」
自分のチケットにプレミアが付くたび、密かに湧き上がる喜び。やがて、以内の後ろ暗い欲望は溢れ出し、どこまでも暴走していく……
果たして、以内とバンドの行きつく先は?
著者にしか書けない、虚実皮膜のバンド小説にしてエゴサ文学の到達点。
内容説明
「俺を転売してくれませんか」伸び悩みに焦るミュージシャンがすがりついたのはカリスマ“転売ヤー”だった。第171回芥川賞候補作。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
starbro
191
第171回芥川賞受賞作・候補作、第四弾(4/5)、尾崎 世界観、三作目です。少し私小説入った転売ヤー小説、文藝春秋社刊でも、この内容では芥川賞受賞は難しいと考えます。 個人的には、人気のあるLIVEは、全てオークション方式で販売して欲しいと思います。少なくとも転売ヤーではなく、そのアーティストに利益を渡したい。 https://books.bunshun.jp/ud/book/num/97841639188222024/08/03
美紀ちゃん
74
転売ヤーは悪だとばかり思っていたがアーティスト側から見たらそうなのかも。定額より高く売れているのをみるのは心踊ること。自分の価値が高く評価されているということだから。PA前がスカスカにならないように例えばキャパ250のところを320入れる感じとかわかる。確かにライブが始まると前にギュッと押されて後ろがあく。それをアーティストは気にするのね。4分のバスドラに合わせて観客が手を叩く悪しき習慣。私はリズムの裏を取りたい。その方が気持ちいい。アーティストからのライブ裏事情などがわかって面白かった。2024/08/14
ころちくわ
49
コンサートチケットにプレミアがついて転売されることに自分の価値を見出すアーティスト。昔は会場に必ずダフ屋がいた。これが今は転売ヤーになったのかな。転売ヤーに「俺のバンドを転売してください『展売』をやってくれませんか」と頼む主人公。『転売』と『展売』?コロナ以降、無観客公演が一般的になってきたら、無観客なのにネット配信もせずアーティストも舞台に立たない、けれどチケットは販売するからプレミアがつき転売される。尾崎さんでなければ書けない内容だな、と思った。2024/09/15
olive
31
転売が合法化された世界が描かれていたのかな?ミュージシャンだから書ける世界観がそこにあった。結局はアニメタイアップで食ってんじゃんって話。には苦笑したけど~2024/11/15
いっち
29
「転の声」は、転売にも使われるSNSアプリの通称名。主人公はバンドのボーカル。勢いに乗れず、現状維持が精一杯。声の調子が悪いことを、SNSで心配される。そんなバンドにとって、ライブチケットにプレミアがつくことを、主人公は重要視する。プレミアをつけるため、転売に注目する。表向きには否定してるが、転売でプレミアをつけたいと思ってる。主人公がカリスマ転売ヤーに、自らを転売するよう懇願するシーンは、どうしようもなくて良かった。普通、周りに人がいる中でそんな頼み事しないだろうと思うが、窮地に追い込まれてたのだろう。2024/06/26
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