出版社内容情報
第45回野間文芸新人賞受賞作。
疾走する想像力で注目を集める新芥川賞作家が描く、馬と人類の壮大な歴史をめぐる物語。
太古の時代。「乗れ!」という声に導かれて人が初めて馬に乗った日から、驚異の物語は始まる。この出逢いによって人は限りなく遠くまで移動できるようになった――人間を“今のような人間”にしたのは馬なのだ。
そこから人馬一体の歴史は現代まで脈々と続き、しかしいつしか人は己だけが賢い動物であるとの妄想に囚われてしまった。
現代で競馬実況を生業とする、馬を愛する「わたし」は、人類と馬との関係
を取り戻すため、そして愛する牝馬<しをかくうま>号に近づくため、両者に起こったあらゆる歴史を学ぼうと「これまで存在したすべての牡馬」たる男を訪ねるのだった――。
内容説明
新芥川賞作家による文学的挑戦。人類と馬との壮大な歴史を、太古から未来まで自在に全力疾走する、驚異の物語。第45回野間文芸新人賞受賞作。
著者等紹介
九段理江[クダンリエ]
1990年埼玉県生まれ。2021年、「悪い音楽」で第一二六回文學界新人賞を受賞し、デビュー。23年、『Schoolgirl』で第七三回芸術選奨新人賞、本作「しをかくうま」で第四五回野間文芸新人賞、24年、「東京都同情塔」で第一七〇回芥川賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
さてさて
160
『登録馬名の文字数制限が九文字から十文字に変更されました』。そんなニュースを偶然に見かけた主人公の『わたし』。この作品ではそんな『わたし』が『馬と人』との関係性を思う先の物語が描かれていました。どこまでも”難解”極まりない物語に唸る他ないこの作品。まったくもってよく分からない物語世界の描写の一方で、スケール感の大きさだけは間違いなく伝わってくるこの作品。わずか176ページの物語にこんなにも苦戦させられてしまうのか!とただただ苦悩させられた、さてさての読書歴の中で最も”難解”と思える作品でした。きっぱり…。2025/05/24
シナモン
112
人と馬、太古から未来への壮大な物語。馬の凛とした美しさと言葉の持つ力ー語彙力なさすぎてうまくまとめられないのが情けなくなるけど、難しいこの世界観になんとかついていきたくて頭フル回転、最後まで読んだ自分をほめてあげたい。刺激的な読書時間でした。九段理江さん、追いかけたい作家さんです。2024/03/22
道楽モン
76
動画でブランキー・ジェット・シティを熱く語る九段理江。浅井健一(ベンジー)という存在が無ければ生まれ得なかった楽曲に惹かれるという。で、本作は芥川賞受賞前に書かれた3作目。ここでいきなりフルスロットル。作家として大化けしてる。書きたいことを書きたい様に表現すること、彼女の想像力はその自由さを愉しんでいるかの様だ。自己認識としての世界の再構築、歴史の再編成に挑んでいる。言葉に対するこだわりは、固有名詞への仕掛けのみならず、既成概念への疑問を呈す。まさに九段理江という存在が無ければ生まれ得なかった作品だ。2024/08/16
がらくたどん
67
九段②自分達を「賢い者」なんていう赤面ワードで呼んで憚らない我々は太古の昔に森で出会った「夜を眼にして横に倒れて走る木の獣」に「乗れ」と言われた日のトキメキをちゃんとDNAに保存して来たかしら?疾走する馬の姿に魅入られた競馬実況者が、出走直前に騎手を振り落とした「シヲカクウマ」への関心を機に馬の言葉を伝えたいとまで熱望するようになり、ネアンドウという姓で繋がる不思議な一族に導かれヒトとウマとの対等な契約とでも言えそうな関係をなぞるように悠久の時を旅する物語。馬が全力の疾走で綴る「詩」を体感してみたくなる。2024/05/02
ネギっ子gen
67
【この世界に生じるすべての事象は、永遠に同じことを、同じ順番で繰り返す。byフリードリヒニーチェ】「ことば」が躍動。<さあ最後の直線、“レオナルドダヴィンチ”が押して4コーナーを回ってくる横に大きく広がっている“アルチュールランボー”はまだその後ろ“エミリーディキンソン”が抜け出して馬場の真ん中を通ってやってくるさらに外からジークムントフロイトが上がってくる内を突いた“レオナルドダヴィンチ”しかし伸びない>――と。魅了され酔い痴れた、傑作。<我々人類をこんなところまで連れてきたのは、他ならぬ言語だ>と。⇒2024/04/11
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