出版社内容情報
ウーバーイーツの配達員をしているK。TikTokerをしている女子大生のICO(イコ)。巨大な「システム」の中に生きる二人の人生が交錯する時、何かが動きはじめる。実力派作家がデビュー10周年に放つ、渾身作。
ラランド ニシダさん、金原ひとみさん、窪美澄さん絶賛!
「まだ見ぬ誰かとの数奇な巡り合わせはインターネットに操られる。ITは我々を孤独にさせてくれない」(ラランド ニシダさん)
「上田岳弘は、こんなにも抽象の世界から、具体の力を行使する」(金原ひとみさん)
「うんざりするような世界でも、私は誰かと繋がっていたい。そんな欲望を肯定してくれたこの小説は、限りなくせつなく、そしてやさしい」(窪美澄さん)
内容説明
ウーバーイーツの配達員をしているK。TikTokerをしている女子大生のICO。二人の人生が交錯する時、何かが動きはじめる。
著者等紹介
上田岳弘[ウエダタカヒロ]
1979年兵庫県生まれ。早稲田大学法学部卒。2013年「太陽」で第45回新潮新人賞を受賞しデビュー。15年「私の恋人」で第28回三島由紀夫賞、18年『塔と重力』で第68回芸術選奨文部科学大臣新人賞、19年「ニムロッド」で第160回芥川龍之介賞、22年「旅のない」で第46回川端康成文学賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
starbro
160
上田 岳弘、6作目です。著者デビュー10周年記念作品、今時の若者たちのリアル、面白くなくはないですが、芥川賞の呪縛から脱し切れていない気がします。 https://books.bunshun.jp/ud/book/num/9784163918037 2024/03/17
ケンイチミズバ
86
Kは常識も道徳も向上心もある。司法試験と学費のための最短距離としてウーバーで働く。世間は配達員を見下す。差別意識を口にはしないものの蔑みの視線を感じる。どの配達員も一括り。Kはある家族を救う。Kのとった行動からそれ以前のページまでの孤独な個の世界から一転し利他、他者との関係が生まれ物語が一気に開けた。ただの配達員でなく受け入れられたK。TikTokで金を稼ぐインフルエンサーの女は人に誇れるようなことはしていない自覚とバズるための嘘をついている罪悪感がある。彼女もウーバーを見下すが、Kという転機が訪れる。2024/03/21
タックン
81
図書館でたまたま題名が目について借りた本。初読み作家さん、芥川賞受賞者とは知らなかった。 ウーバーイーツ配達員の彼KとTikTokerの彼女ICO、現代の巨大システムの中で生きる2人の男女の物語、二人が交錯した時・・・・。 淡々とした文章で読みやすいが、正直本当のところ何がいいたいかは掴みずらい。129ページから書かれてる団塊世代とかバブル世代の(くうねるあそぶ)風潮への非難とか、30年後の今の若者の嘆きか? でもこの作家さんはITベンチャーの経営者で45歳だから微妙だし、説得力ないよなあ。2024/03/03
がらくたどん
63
すごく気になっていた作者さんなのだが初めましての1冊。実は以前やはり自転車で書類を届ける職業の物語を読んで以来、飛脚とか早馬に近い半生身で普通の人には出せないスピードで地を駆けて何かを届ける職業が現代でも存在する事に興味がある。出前と違い純粋に不特定の配達元と配達先を結ぶ仕事。自身の地理把握能力と体力を頼りに時間と闘う仕事は、その割に実入りも賞賛も少ないため既読の物語では主人公の暴力性が活性化された。本作の主人公は葛藤を乗り越えた後のようで実に安定した前向きさで諸国修行の武芸者の面持ちで開眼を待つ。快作♪2024/04/20
pohcho
61
ウーバーイーツ配達員のKとTikTokerのICO、二人の大学生の出会い。現代のおとぎ話のような物語の中に、若者の社会への怒りが織り込まれていた。「くうねるあそぶ」が懐かしい世代だが、ラスコーリニコフ(罪と罰)みたいな若者が増えたら怖いなあと。Kが子どもを助ける場面が好き。ウーバーイーツ頼んでみたいし、オーディブルでカフカも聴いてみたい。2024/04/22