出版社内容情報
池井戸潤の最新長編の舞台は、
「東京箱根間往復大学駅伝競走」――通称・箱根駅伝。
青春をかけた挑戦、意地と意地のぶつかり合いが始まる。
ついに迎えた1月2日、箱根駅伝本選。
中継を担う大日テレビのスタッフは総勢千人。
東京~箱根間217.1kmを伝えるべく奔走する彼らの中枢にあって、
プロデューサー・徳重はいままさに、選択を迫られていた――。
テレビマンの矜持(きょうじ)を、「箱根」中継のスピリットを、徳重は守り切れるのか?
一方、明誠学院大学陸上競技部の青葉隼斗。
新監督の甲斐が掲げた「突拍子もない目標」の行方やいかに。
そして、煌(きら)めくようなスター選手たちを前に、彼らが選んだ戦い方とは。
全てを背負い、隼斗は走る。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
はにこ
55
正直、上巻を読み終えた時は、テレビ局の下りは要らないんじゃないかと思っていた。しかし、下巻での辛島のアナウンスによりその考えは打ち消される。走る一人ひとりの想いや背負っているものが伝えられることによって上巻での伏線が回収されていく。それが涙腺にめちゃめちゃ効いてきて電車の中で耐えるのがキツかった。襷が繋がり終わりが見えるにつれ、いつまでもこの光景を見ていたい。そんな気になる作品だった。2024/04/26
PEN-F
30
勝ち負けを超越した何かがあった。記録も残らなければ順位もつかない。関東学生連合チーム。自身の大学で箱根本戦を逃した“敗者”たちが、過去の自分に勝つために様々な葛藤や苦悩を乗り越えて次への一歩を踏み出す姿に胸が熱くなる。記録の敗者から記憶の勝者へ。結果や数字とかじゃなくて、敗北を経験した若者たちの一人の人間としての成長譚に感謝と称賛を贈りたい。歴史に残らない歴史が生まれた瞬間でした。2024/04/30
ほのぼの
20
箱根駅伝の初日。下巻の物語が始まる。スポーツ物でこんなに泣いたのは初めて。監督の声掛けに涙、給水係の言葉に涙、タスキが繋がっては涙。往復10区間すべてが感動的だった。中継を担うTVマンたちの奮闘にも胸が熱くなった。CM挿入のタイミングにハラハラするなんて経験は初めてだ。箱根駅伝のCMは特別仕様でそれも見所のひとつだが。今年の第100回記念大会は連合チームの参加がなかったらしい。(気が付いてもいなかった。ごめん。)来年は復活するのだろうか?順位もつかない。記録も無い。だから尊い。連合チームを応援したい!2024/05/01
Schunag
11
下巻はほぼまるまる箱根駅伝のレース。つまり丸の内から箱根へ走って戻ってくるだけなのに、単調でないどころかカラフルでスリリングであることに驚くが、よく考えれば主人公チームだけでもランナーが10人、それぞれのドラマがあるのだから短編小説が10編入っているようなものなのだ。天候、コンディション不良、怪ランナーの登場、ライバルとの因縁などドラマの種は喜怒哀楽全部入り。要所要所に入る中継側のドラマも素晴らしく、CMを入れるタイミング選びがこんなにもスリリングになろうとは。個人的な推しは辛島アナ。その名調子に泣く。2024/04/24
manabukimoto
7
下巻は箱根駅伝本選。敗者で寄せ集めの学生連合チームの奮闘。 読み終えて、思う。私が毎年心を動かされているのは箱根駅伝ではなく「箱根駅伝中継」なのではないかと。 走るという、苦しみに加え、抜かされたり、心が折れたり。そんな姿を見ることが苦痛ではなく、むしろ「感動」に昇華させられるのは、そこに「物語」が加わるから。中継アナ辛島の語りに、数度、泣かされる。 見慣れたコースとユニフォームカラーが脳内に背景として浮かび、確かな語りが心を揺さぶる。 甲斐、諸矢、青葉、徳重。スピンオフの宝庫。面白かった!2024/04/28