出版社内容情報
東京・新宿にある都立高校の定時制。
そこにはさまざまな事情を抱えた生徒たちが通っていた。
負のスパイラルから抜け出せない二十一歳の岳人。
子ども時代に学校に通えなかったアンジェラ。
起立性調節障害で不登校になり、定時制に進学した佳純。
中学を出てすぐ東京で集団就職した七十代の長嶺。
「もう一度学校に通いたい」という思いのもとに集った生徒たちは、
理科教師の藤竹を顧問として科学部を結成し、
学会で発表することを目標に、
「火星のクレーター」を再現する実験を始める――。
『月まで三キロ』『八月の銀の雪』著者がおくる、
今年一番熱い青春科学小説!
内容説明
東京・新宿にある都立高校の定時制に集った、さまざまな事情を抱えた生徒たち。彼らは「科学部」を結成し、「火星のクレーター」を再現する実験を始めた。煌々と明かりが灯った夜の教室で、小さな奇跡が起きる―。
著者等紹介
伊与原新[イヨハラシン]
1972年、大阪府生まれ。神戸大学理学部卒業後、東京大学大学院理学系研究科で地球惑星科学を専攻。博士課程修了後、大学勤務を経て2010年、『お台場アイランドベイビー』で横溝正史ミステリ大賞を受賞し、デビュー。19年『月まで三キロ』で新田次郎文学賞、静岡書店大賞、未来屋小説大賞を受賞。20年刊行の『八月の銀の雪』は直木賞候補、山本周五郎賞候補となり、21年本屋大賞で六位に入賞する(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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akky本棚
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
777
様ざまな理由から定時制高校に通うことになった人たち。そこは一般的に言えば社会のエリート層からは遠いだろう。そんな高校の一つ、東新宿高校に赴任してきた理科教師の藤竹。彼もまたいわゆる熱血型教師像からはほど遠い。定時制高校を舞台にドロップアウトした高校生たちに目標を与えることで新たな再生を図るーそんなのはこれまでにいくつもあった、いわば使い古された物語である。本編では、そこに惑星科学が加味されている点のみが唯一新しい。そうなのだが、これが思わずハマってしまうのである。物語の構造も、プロット展開も特別なものは⇒2025/03/31
パトラッシュ
723
様々な過去や事情を抱えて新宿の定時制高校に集まった老若男女が「科学部」をつくり、担任教師の指導で火星のクレーター再現実験に挑戦する姿は、明日を信じて生きることを忘れてしまった日本人に何かに夢中になる大切さを教えてくれる。昼間の高校生や偉そうな専門家面をする者には定時制の学生など落ちこぼれでしかなく、妨害や失敗もあってくじけそうになりながら、内に秘めたマグマの熱さで不可能を可能にしていく。セッションの発表で見事優秀賞を得た彼らの前には広大な宇宙が開けるのだ。絶品の青春小説はスレた大人の感性も熱くしてくれる。2023/11/20
青乃108号
714
定時制高校の理科の教師が科学部を立ち上げ、1人、また1人と部員が増えていく中で、ある実験が形となり、ついには科学連合大会の出場を目指すという話。文系脳の俺には理解が難しい記述が多く、よくわからん装置の事を延々読まされ、正直早く終わらんかなと思ってしまった所もあったけど。作品のテーマはとても良かったと思うんですよ。本題から逸れるが最も感動したのが「オポチュニティの轍」のエピソード。三年しか稼働しない予定だった火星探査機オポチュニテイは予想を遥かに超えて何と15年も稼働したの。火星にたった1機で。頑張ったね。2024/05/22
名古屋ケムンパス
688
That's excellent.「劇中劇」という言葉があるなら、本作品のプロットはさしずめ「実験中実験」となるのかもしれません。様々な事情で全日制の高校に通えなかった面々が、地学教師の藤竹の科学部に集うことになりました。持てるの才能の発現の切っ掛けを手にして、夢を実現しようとする姿は本人ばかりでなく、これを支える人までも幸せにします。2024/06/13
zero1
604
何故、人は学ぶ?本書の答は私の琴線に触れた。間違いなく今年のベスト本候補。定時制高校には問題を抱える生徒が集まる。ディスレクシア、起立性調整障害、ハーフに高齢者。理科教師の藤竹は生徒を集め【実験】に挑む。やがて化学変化が…。事実をベースにしているだけに説得力あり。幾つかツッコミ所はあるが、知的好奇心を刺激し爽快感ある秀作。養護教諭の佐久間が出した結論【トリアージ】は実に深い。名言多数(後述)。この作家は3冊目。次は「月まで三キロ」を読むか。SF「星を継ぐもの」は読んだが「火星の人」は未読。読まねば💦。2024/03/09