出版社内容情報
「ハイジの道」の“フロー体験”、ローマの廃墟群と“水中世界”……圧倒的に美しく知的興奮に満ちたハイパートラベル当事者研究本。
内容説明
ASD(自閉スペクトラム症)とADHD(注意欠如・多動症)とを併発した文学研究者が世界を旅するとどうなるのか?圧倒的に美しく、知的興奮に満ちたハイパートラベル当事者研究!
目次
1 ゆらめく世界(永劫回帰する光景 ウィーン;コミュ障たちの邂逅 プラハ;誠 ベルリン ほか)
2 うねる想像力の彼方へ(閃光に導かれて アテネ;廃墟の文体 ローマ;脱男性化 フィレンツェ ほか)
3 あなたのとなりで異界が開く(新しい天使 ニューヨーク;星々 ロサンゼルス;黄金とエメラルド バンコク ほか)
著者等紹介
横道誠[ヨコミチマコト]
1979年大阪市生まれ。京都大学大学院人間・環境学研究科研究指導認定退学。文学博士(京都大学)。現在、京都府立大学文学部准教授。専門は文学・当事者研究。本来はドイツ文学者だが、40歳で自閉スペクトラム症と注意欠如・多動症を診断されて以来、発達障害の当事者仲間との交流や自助グループの運営にも力を入れ、その諸経験を当事者批評という新しい学術的・創作的ジャンルに活用しようと模索している(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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starbro
203
タイトルに魅かれて読みました。横道 誠、初読です。本書に描かれた街の内、11/25私も訪れているので、親近感が湧きました。文章を読んでいる限り、ASD(自閉スペクトラム症)&ADHD(注意欠如・多動症)は、あまり感じられませんでした。カサブランカが、単なる地名でなく、カーサ(家)+ブランカ(白い)で白い家の街であることを本書で知りました。 https://books.bunshun.jp/ud/book/num/97841639153262022/06/07
ゆいまある
104
独文学研究者の各国旅行記。そう書けばいいものを何故ASD特性まで看板にしないといけないのか。発達障害故に学校では苛めにあい、自宅ではエホバ信者の母から虐待を受け、壊れた魂を抱える著者だからこそ、生きる為の記憶の再構築が必要だった。回想シーン多めだが、乾いた景色と切ない思い出のグラデーションにくらくらする。抑揚が少なく、硬質な説明が過剰な文体は村上春樹をセンチメンタルにした感じで、ああやはり春樹は自閉文学なんだと腑に落ちる。南の島にしか興味がない私にはヨーロッパの美術館巡り主体の内容はちょっと退屈だが良本。2023/01/22
どんぐり
88
40歳で発達障害の診断を受けた大学教員(専門はドイツ文学)の世界周航記25話。自閉スペクトラム症の非現実感覚や注意欠如・多動症のマインドワンダリング(心の遊動)が作用して、彼の眺める現実世界は水のなかにいるかのようにぼやけて揺らめく。イスタンブールではブルーモスクの青い美しいものを探し求めて青の饗宴に陶酔。砂漠を感じる街では、自分の体が白い砂塵となって消えてゆくのを体感する。その体験が、さまざまな文学作品を呼び起こし、「世界文学案内」のエッセイにもなっている。→2023/10/31
羽
32
カルト宗教を信仰する母に肉体的暴力を受けて育ち、学校ではいじめられ、40歳で自閉スペクトラム症とADHDと診断される。そんな著者が、20代後半から30歳前後に訪れた海外旅行記。イスタンブールで青に溺れ、カサブランカで白い砂塵と化し、各地で音楽と文学をとめどなく連想する。当時はまだ診断されていなかった発達障害特有の症状を発症しながら世界中を旅した著者。紀行文として楽しめる上に、いつも脳が働いているため疲れていて、身体の境界線もあいまい、その他諸々、当事者の生きづらさもよくわかる唯一無二の世界周航記だった。2022/10/04
くさてる
27
副題通り、ASDとADHOの特性を持つ文学・当事者研究者の学者による、ヨーロッパ中心の滞在記。面白おかしい内容ではないけれど、重苦しいものではない。それぞれの国で暮らし、あるいは旅行しながら、著者の心を通り過ぎる雑感や連想、感情がつれづれに語られる。著者の生きにくさと不器用さは読んでいてときに身につまされ、すこしあきれ、やっぱり身につまされる。良かったです。2023/03/15