出版社内容情報
東海道から身延山道に入った万沢宿にある旅籠・にべ屋。
関ケ原の大戦から十五年、にべ屋のような小さな宿屋にも、御上の探索方が探りを入れに来たり、素性の知れないお侍が訪れたり。今日もにべ屋には厄介事が持ち込まれて……。
内容説明
街道筋の旅籠には、今日も厄介ごとが持ち込まれる旅籠・にべ屋の主智吉は、ある秘密を抱えていた―。旅人と宿場の人々が織り成す悲喜こもごも。
著者等紹介
村木嵐[ムラキラン]
1967年、京都市生まれ。京都大学法学部卒。会社勤務を経て、95年より司馬遼太郎家の家事手伝いとなり、後に司馬夫人である福田みどり氏の個人秘書を務める。2010年、『マルガリータ』で第十七回松本清張賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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いつでも母さん
153
旅籠・にべ屋の智吉は十年前に母の跡を継ぎ主となった。その智吉の出自から厄介事が持ち上がる・・智吉の母やそこに働く者たちと智吉の関わりが面白い連作7話。挨拶代わりの『にべ屋』から始まり、母・お蕗の『女の文』妻となるおすずの『姫虫』智吉の前妻・雪枝の『十年待つ』なかなかに読ませてくれる。往来記とは上手い。もう少しこの【にべ屋】の話を読んでみたいなぁ。2022/02/13
タイ子
81
東海道から身延山に入った万沢宿にある旅籠「にべ屋」が舞台。関ヶ原の合戦から15年、未だお上の探索方が入ったり、素性の知れない侍が街道を往来する日々。タイトルと帯から想像する宿泊客の厄介ごとの物語かと思いきや、確かにそれもあるが趣が少し違った。宿を興した主の母親と主には秘密裡の過去があり、それに関係する客の訪れ、過去を断ち切る母と息子の固い決意が描かれている。終盤で主・智吉の結婚に際してかつて妻子がいた展開はサスペンスのどんでん返しか?!と思ってしまった。好きなのは栃太郎の編、彼の成長した姿に思わずウルッ!2022/07/02
onasu
20
旅籠が舞台と言っても、江戸も初年、甲斐と駿河を結ぶ身延山道沿いの万沢宿とは初見で、後の世の賑わった宿場とは異なり、静かな佇まいに浸ってこられました。 各編は継いでから10年の主の出自、母親(隠居)が旅籠を構えてからの経緯、女中から若女将となる者との関わりといった7編。あくまで往来記という体裁だが、内容としては貴種漂流譚、あるいは歴史(戦国)こぼれ話し的な側面も。 末編で気になっていたことが明かされているのにも好感。昔のことと分かり辛いところが些かあったが、心おきなく鄙の宿に行って来られる佳作でした。2022/02/14
OHモリ
19
・時代小説、人情話の「日常の謎」連作集といった感じ。舞台は東海道から枝分かれして甲州に向かう街道にあるにべ屋という旅籠。大きな盛り上がりはないが、宿主の出自に絡むいろいろなど・・・ ・江戸幕府が整うまでの庶民の生活ってこんな感じだったの?とちょっと新たに感じた。たとえば2編目の「うずら隠れ」では農民が出稼ぎ感覚で足軽として戦さに参戦してそのうちの何人かは命を落として帰ってこないのが日常・・初めて知った。けど何だか現代に通じているのかもしれないという気もする。2022/04/16
Book Lover Mr.Garakuta
17
【図書館】【速読】:面白い時空間の中に吸い込まれていく感じがする。そのために・・・?と為る事もあったが、それなりに旨く纏められたと思う。プロに向けてそれなりとはいいがたいが、個人的にそう感じたままを伝えている。作者紹介で、司馬遼太郎家の家事手伝いになったそうで、そりゃ凄いと思い、この作品の原点を観ることができたと思った。2022/06/29