出版社内容情報
ありふれた事件のはずだった。「俺が名探偵の役目を果たせるか、今回は怪しい」。火村を追い詰めた、不気味なジョーカーの存在とは。
内容説明
大阪の場末のマンションの一室で、男が鈍器で殴り殺された。金銭の貸し借りや異性関係のトラブルで、容疑者が浮上するも…。コロナ禍を生きる火村とアリスがある場所で直面した夕景は、佳き日の終わりか、明日への希望か。圧倒的にエモーショナルな本格ミステリ。
著者等紹介
有栖川有栖[アリスガワアリス]
1959年、大阪府生まれ。同志社大学法学部卒業。在学中は推理小説研究会に所属。89年『月光ゲーム』で作家デビュー。書店勤務を続けながら、執筆活動を行い、94年から専業となる。2003年『マレー鉄道の謎』で日本推理作家協会賞、08年に『女王国の城』で本格ミステリ大賞を受賞。18年に吉川英治文庫賞を受賞した「火村英生(作家アリス)シリーズ」は、絶大な人気を誇る。著書多数(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
starbro
376
有栖川 有栖は、新作をコンスタントに読んでいる作家です。本作は、「臨床犯罪学者 火村英生シリーズ」誕生から30年の記念作品でした。幼馴染忖度ミステリ、事件は地味ですが、舞台となる島の夕陽は綺麗だったんでしょうね。 https://books.bunshun.jp/ud/book/num/97841639148482022/01/20
パトラッシュ
306
特殊設定ミステリ全盛期の今日、あえて古典的な本格推理のスタイルで押し出してきた。市井で起こった異様さのかけらもない「普通の」殺人事件解明に、探偵も警察も正統な捜査手法で挑む。登場人物の背景や事情聴取、コロナ禍の状況描写や容疑者の過去を探る瀬戸内の島旅なども、英米黄金期の小説をなぞるようにきちんと描かれていく。最後に真相が明らかになった時、そこにあるのは懸命に生きてきた普通の人びとが思いがけず手を汚さねばならなかった哀しみなのだ。古臭いと感じる読者もいるだろうが、昨今の新人作品よりも深い余韻を与えてくれる。2023/01/14
ちょろこ
158
堪能した一冊。ミステリ+思いがけない旅。読後もカバー写真を眺めて旅情を味わう。犯人やトリックを知りたい気持ちが逸るミステリもあるけれど、こちらは真逆。じっくりゆっくり、できればまだまだ真実に辿り着かないで欲しい、まだまだ旅していたい、そんな気にさせられるなんとも罪なミステリだった。捜査会議という名の火村&アリス、二人に流れる時間、他愛無い会話がやっぱり好き。心地良い。そしてこの事件はまるで証明問題。答えまでをどう証明していくか。とことん突き詰めていく過程、複雑に絡み合う心情、そして旅情まで隈なく堪能した。2022/02/26
遥かなる想い
127
2023年このミス国内第3位。 コロナ禍の大阪を舞台にしたミステリーである。犯罪学者火村と、作家有栖川のコンビが 微笑ましい。トリックを追うのではなく、 被疑者の人物を追う視点は エモーショナルな雰囲気を醸し出す。真相を巡る旅で見えてきたものは何だったのか? 犯罪の動機がやや弱い気もするが、ひどく抒情的なミステリーだった。 2022/12/05
あっちゃん
122
前半はあまり話が進まず事件自体も地味な印象の殺人事件で面白くない訳では無いのだけど盛り上がりに欠ける滑り出し(笑)しかし後半、特に2人が旅行に出た辺りからグイグイと来て最後には大満足!ナルホド、トリックよりもエモーショナルね( ̄▽ ̄)2022/05/14