内容説明
自ら政治的決定を下したのは、三度。天皇とはこの国にとっていかなる存在か。気鋭の筆者が歴史のアイロニーを描く。令和時代だからこそ書けた昭和史小説。
著者等紹介
中路啓太[ナカジケイタ]
1968年、東京都生まれ。東京大学大学院人文社会系研究科博士課程を単位取得の上、退学。2006年、『火ノ児の剣』で第1回小説現代長編新人賞奨励賞を受賞し作家デビュー。15年に『もののふ莫迦』で第5回本屋が選ぶ時代小説大賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
1 ~ 1件/全1件
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
KAZOO
107
昭和天皇がかかわった事件などを中心とした話が5つ収められています。実際にあった話なのですがノンフィクションではなく昭和天皇の人間的な場面を中心とした物語なのでしょう。ただこの五つのはなしにはその当時の多くの人々が登場して臨場感があるような感じで語られています。戦争に対する天皇の気持ちがよく描かれていると感じました。2020/02/13
雅
36
昭和の史実を基にした短編集。二・二六事件や戦争に関わった政治家や軍人のドラマ。読む前は重たい雰囲気かと思っていたらホロッとくる暖かみのある話でした。2019/08/26
速読おやじ
19
昭和天皇を主人公にした小説というのは嘗てはあり得なかっだろう。自分自身も若かりし頃は誤解していた部分もあったが、また新たな発見があった。旧憲法下でも今の憲法でも天皇陛下の役割は変わらないと発言された箇所があった。旧憲法下でも立憲君主制であったし、決して専制君主ではなかったのだ。その天皇陛下が自ら決断を下したことが三つあるという。張作霖爆殺事件の際の田中内閣を事実上罷免したこと、2.26事件での叛乱軍討伐、戦争の終結である。どの短編も興味深い。「地下鉄の切符」では電車の中で読みながら、思わず落涙した。良書。2024/01/23
デコ
16
「天皇であることは、自分の宿命だと思っている」と深い諦念に裏打ちされた覚悟とい文を天皇に単独インタビューをしたニューズウィーク東京支局長バーナード・クリッシャーは記事に載せています。唯一無二の絶対的存在という孤独を感じさせる短編集。そして昭和という激動の時代も切り取っています。2019/11/08
ほうすう
12
戦前の昭和を舞台にした短編集。永田事件を起こした相沢三郎を描いた「感激居士」、二・二六事件のなか岡田首相救出に動いた憲兵の活躍を描いた「総理の弔い」、鈴木貫太郎の妻を主役に据えた「澄み切った瞳」など面白い人選での物語が続く。個人的には混乱のなか各々がそれぞれの思惑で動く「総理の弔い」が読んでいて楽しかった。2024/05/31