ジハーディ・ジョンの生涯

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ジハーディ・ジョンの生涯

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  • サイズ B6判/ページ数 352p/高さ 20cm
  • 商品コード 9784163904702
  • NDC分類 289.3
  • Cコード C0098

出版社内容情報

クウェート難民としてロンドンで育った少年は、なぜイスラム国の斬首人となったのか。彼と会った唯一のジャーナリストによる評伝。著者はかつて、当局にイスラム過激派と疑われたために職も婚約者も失ったと訴える、ムスリムの青年を取材したことがあった。クウェート難民としてロンドンで育ち、大学でITを学んだ礼儀正しい青年、ムハメド・エムワジは数年後、イスラム国の黒覆面の処刑人「ジハーディ・ジョン」となり、湯川遥菜さんや後藤健二さんらを斬首することになる。エムワジはなぜ、凶悪なテロリストになったのか。「ジョン」と会った唯一のジャーナリストによる決定的評伝。



彼の足跡を辿ると、欧米社会で育ったムスリムの若者たちが偏見や差別にさらされ、将来に絶望する日々のなかで過激思想に染まっていく状況が見えてくる。テロ対策の名のともにイスラム社会に行っている、抑圧や監視が若者たちの先鋭化につながり、ジハード戦士を生み出す土壌になっている、と著者は指摘する。ジハーディ・ジョンの替えは、いくらでもいるのだ。「クローズアップ現代」でキャスターを務めた、国谷裕子氏の渾身の解説も必読!





(目次)



序章 わたしは「ジョン」と会っていた

人質を跪かせ、その首を斬り落とす蛮行で世界を震撼させた黒覆面の死刑執行人は誰なのか? 著者は5年前、イスラム国の「ジハーディ・ジョン」ことモハメド・エムワジに会っていた。当時の彼は礼儀正しい青年だった。





第一章 クウェートから来た少年

クウェート難民の息子としてロンドンで育ったエムワジは、サッカーが好きな少年だった。十代になると不良仲間と酒を飲み、大麻を吸って過ごした。やがて大学に進学するが、そこは過激なイスラム教徒の巣窟だった。



第二章 イスラム過激派のネットワーク

ロンドンには、アルカイダなど過激派グールプに憧れるムスリムの若者たちや、ジハードを煽動する聖職者のネットワークが存在した。大学生になり、コーランを学び始めたエムワジは、徐々に過激思想に惹かれていく。



第三章 MI5とアフリカの角

ソマリアの過激派の影響力を恐れたMI5(保安部)はイスラム社会への監視体制を強化する。エムワジも卒業旅行で行ったタンザニアで入国を拒否された。そんなムスリムの若者たちの窮状を著者は取材することになる。



第四章 素顔のエムワジ

婚約したエムワジだったが、MI5の嫌がらせで破談に。クウェートに渡り、新しい仕事と結婚相手に巡り合うが、英国政府の干渉で国外追放となる。迫害の実態をメディアに訴えるべく、エムワジは著者に接触してきた。



第五章 監視対象

クウェートでの新生活を台無しにされたエムワジは、MI5監視下のロンドンで失意の日々を過ごす。一方、ソマリアに渡ったエムワジの仲間たちはアルシャバーブの戦闘員になるが、米軍のドローン攻撃で爆死する。



第六章 シリアへの道

勃発したシリア内戦に多くのイスラム過激派が集結し、兵を募った。国外脱出に成功したエムワジも現地に馳せ参じ、戦士の一人になる。やがて彼の属する部隊は、後に「イスラム国」と名乗ることになる組織と合流する。



第七章 世界を震撼させた斬首

人質の救出作戦に失敗した米国は、イスラム国への空爆を開始する。対抗するイスラム国は、ナイフを持った黒覆面の男が米国人の人質を斬首するビデオをネットで公開する。処刑人「ジハーディ・ジョン」のデビューだ。



第八章 テロリストの逆流

ジョンが死んでも、テロの脅威は終わらない。危険なのは戦地から欧米諸国へ流入するジハーディストと、SNSを通じてイスラム国に洗脳された欧州のムスリムの若者たちだ。そして「パリ同時多発テロ」が勃発する。



最終章 「ゼロ・トレランス」の罠

英国ではムスリムの若者たちへの監視体制を強化する「防止戦略」を徹底し、過激思想に対して「ゼロ・トレランス(不寛容)」の姿勢を示した。だが、その対策は功を奏さず、逆に若者たちの先鋭化につながっている──。



解説 『ジハーディ・ジョンの生涯』を読み、後藤健二さんを想う (国谷裕子)

ロバート・バーカイク[ロバート バーカイク]

野中 香方子[ノナカ キョウコ]

国谷 裕子[クニヤ ヒロコ]

内容説明

著者はかつて、当局にイスラム過激派と疑われたために職も婚約者も失ったと訴える、ムスリムの青年を取材したことがあった。クウェート難民としてロンドンで育ち、大学でITを学んだ礼儀正しい青年、モハメド・エムワジは数年後、イスラム国の黒覆面の処刑人「ジハーディ・ジョン」となり、湯川遙菜さんや後藤健二さんらを斬首することになる。エムワジはなぜ、凶悪なテロリストになったのか。「ジョン」と会った唯一のジャーナリストによる、決定的評伝。

目次

序章 わたしは「ジョン」に会っていた
第1章 クウェートから来た少年
第2章 イスラム過激派のネットワーク
第3章 MI5とアフリカの角
第4章 素顔のエムワジ
第5章 監視対象
第6章 シリアへの道
第7章 世界を震撼させた斬首
第8章 ジハーディ・ジョンの仮面をはぐ
第9章 テロリストの逆流
最終章 「ゼロ・トレランス」の罠

著者等紹介

バーカイク,ロバート[バーカイク,ロバート] [Verkaik,Robert]
フリー・ジャーナリスト。イギリス王室の厳しい経済状況、トニー・ブレアの首相在職中の蓄財などを報道。また、グアンタナモ収容所を訪れ、シリアで拷問を受けた囚人にインタビューした。2010年、優れた報道に贈られるオーウェル賞とポール・フット賞にノミネート。イスラム国の処刑人「ジハーディ・ジョン」ことモハメド・エムワジにインタビューした唯一のジャーナリスト

国谷裕子[クニヤヒロコ]
米国ブラウン大学卒業。1993年4月から2016年3月まで23年間にわたり、NHK「クローズアップ現代」のキャスターを務める。2011年、日本記者クラブ賞受賞

野中香方子[ノナカキョウコ]
翻訳家。お茶の水女子大学教育学部卒業(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。

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感想・レビュー

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とろこ

61
本書の副題は、「テロリストができあがるまで」らしい。ジハーディ・ジョンこと、モハメド・エムワジの蛮行は、決して許されることではない。だが、大学生時代までの彼は、「礼儀正しく思いやりのある青年」だった。そんな彼を、イギリスに住むクウェート難民でムスリムだという理由だけで、過激思想の持主だと決めつけ、あらゆる嫌がらせをして職を奪い、婚約を2度も破談にし、家族との関係まで壊したMI15。彼らの過度の干渉(などという言葉では生易しい)も、テロリストを産んでしまった一因ではなかろうか。様々な難問を提起する一冊。2017/11/18

しゃが

29
衝撃の出来事、後藤さん殺害のISの黒覆面のジハーディ・ジョンはモハメド・エムワジというクウェート難民の息子であり、イギリス国籍だった。ムスリムの若者が偏見や差別により、将来に絶望し過激思想に惹かるが過激派ではなかったらしい。が、保安部の執拗な監視から渡航の自由、仕事、婚約者を失う。その抑圧や監視が先鋭化、過激化につながっていく。決して彼らを容認できないが、第二のジハーディを生み出す根底には紛争、宗教、信条からの被害も一因では…。報復(人質への虐待や殺害)の連鎖の終焉が見えてこないことがあまりにも辛い。2016/09/02

ののまる

11
MI5のスパイ容疑や締め付けに怯えるクェート難民家庭の大学生がイスラム国の斬首処刑人になるまで。処刑前の後藤さんのまっすぐな目が辛い。人質となったからこそたくさん世界に伝えたいこともあったろう無念さ。先日、イギリスがテロ対策に協力するムスリムを大幅増員したと発表がありました。スパイはイスラム法では許せない行為であるというし、イギリスのムスリム社会を一層分断していく気がする。イギリスのテロ対策が次々とジハーディ・ジョンを生むのでは・・・。2016/09/28

DEE

6
普通に生活してる国で、ムスリムだからというだけで嫌がらせを受けたり、旅行を制限されたり、テロリストの濡れ衣を着せられ結婚までご破算になったら、それは恨みもするよな。 そこに手を差し伸べたのが後にISとなっていくグループだったら… 力で強引に押さえつければそれだけ反発も強まる。 それに加えてイスラム教への無意識的な怯えと根深い人種差別。 やってることはどこぞの核兵器を飛ばしてる国と大差はない。 まずはイスラム教=テロリストという間違った見方を根本から変えていかなければ。2016/11/26

sasha

5
イギリス治安当局による、ムスリムの若者たちへの嫌がらせがえげつないわ。確たる証拠もなくテロリスト扱いだし、「こっちのスパイにならなきゃ嫌がらせするぞ」ってさぁ。ジハーディ・ジョンこと、モハメド・エムワジがどの時点で過激主義に感化されたのかは不明だけれど、イギリスの治安当局のような嫌がらせをしていたら国内で不満を募らせ、憎しみを育てる土壌を作るだけじゃないのか。就職も結婚も妨害されるっておかしくないか?西洋は自分たちの手でテロリストを生み育てているようなものかな。2016/09/19

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