慶應本科と折口信夫―いとま申して〈2〉

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  • サイズ B6判/ページ数 349p/高さ 20cm
  • 商品コード 9784163901688
  • NDC分類 913.6
  • Cコード C0093

出版社内容情報

亡き父の日記から慶応大学での日々、知の巨人や歌舞伎の名優らの素顔を浮かび上がらせる。昭和初期の貴重な資料ともなる書き下ろし。

〈本の達人〉北村薫が読み解く小さな昭和史

明治42年に生まれた父の青春を遺された日記をもとに描き、〈昭和〉という時代を描く「いとま申して」シリーズの第二弾。今回、著者の父・宮本演彦は慶応大学予科から、遂に本科へと進む。そしてこの物語の主役ともいえるふたりの知的巨人が登場する。
その一人が西脇順三郎。慶應義塾大学文学部教授に就任、英文学史などを担当。『三田文学』を中心に「PARADIS PERDU」を仏文で発表するなど批評活動を開始してきたが、本書の舞台となる昭和10年頃には詩集『Ambarvalia(アムバルワリア)』で詩壇の萩原朔太郎、室生犀星の称賛を受け、詩誌『詩法』の創刊に参画。その英文の授業は、実に刺激的なものだったという。
もう一人の巨人は、国文学者・民俗学者として知られる折口信夫。学生を連れてしばしば日本各地へフィールドワークに赴き、演彦青年もその薫陶を受ける。折口信夫門下生として関西旅行にともに赴くが、奈良、京都の風景の細やかな描写、何気ない日常の光景が、在りし日の大学教授と学生たちの息遣いをよみがえらせる。
西脇、折口師以外にも、演彦氏が、後に演劇評論家となる友人の加賀山直三とともに、歌舞伎に親しんだことから、市村羽左衛門、中村福助ら当時の花形役者たちのエピソード、そして徐々に色濃くなる戦時色も日常の光景としてつづられていく。
昭和初期を実体験的に知る重要な資料であると同時に、ひとりの青年の切実な悩みを吐露する青春の物語。著者曰く「当時の学生の姿を、このような形でとらえた本はあまりない」一冊となった。

内容説明

教壇には西脇順三郎、折口信夫。舞台には市村羽左衛門、中村福助…。慶大生の父が記した伝説の人びと。“本の達人”北村薫が読み解く、小さな昭和史。

著者等紹介

北村薫[キタムラカオル]
1949年、埼玉県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業。大学時代はミステリ・クラブに所属。高校で教鞭を執りながら執筆を開始。89年『空飛ぶ馬』でデビュー。91年『夜の蝉』で日本推理作家協会賞受賞。2006年に『ニッポン硬化の謎』で本格ミステリ大賞(評論・研究部門)受賞。09年『鷺と雪』で直木賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

KAZOO

129
北村薫の父親の日記による「いとま申して」三部作の第2部です。当時の学生生活がよくわかります。父親の日記から北村がある程度想像して書いている部分もあるのでしょう。慶応大学の教壇には折口信夫や西脇順三郎がいて今から見ると羨ましい限りです。様々な本などが出てきて一種の教養小説のような気がします。私には非常に合う小説でした。2015/11/03

ダイ@2019.11.2~一時休止

93
3部作の2冊目らしい。昭和の文芸の雰囲気はよくわかった。万人受けしそうにない作品なのに続編って、八月の六日間の続編の方が売れそうなのに・・・。2014/12/05

NAO

71
作者の父親の生涯を描いた三部作の第2作目。昭和初期の、戦争に向かうまでの暗い時代。そういった時代の学生生活を書いたものは、作者が言うようにあまりないようだ。だが、この演彦の学生生活から当時の学生たちの暮らしぶりが見えてくるかというと、ちょっと疑問だ。手弁当で慶応に行くのが恥ずかしくもあったと言いながらも、もともと裕福な家柄のためか、歌舞伎を欠かさず観、高価な本も買い、結構贅沢な暮らしをしているのは、かつての習慣をなかなか変えられない一家の生活習慣に染まっているからだろう。⇒2021/03/09

万葉語り

56
シリーズ2作目。作者の父宮本演彦が慶應本科で折口信夫に傾倒しつつ、家が傾いて貧窮していても、歌舞伎や能や音楽の本物を身の肥やしにしていく生活ぶりが若者っぽくて見栄を張るのもかわいらしかった。家族を大事に思い、自分の将来に迷う若者の姿は今も昔も変わらないと思った。2019-0072019/01/06

佐島楓

38
昭和に入ったばかりの時代、北村先生のお父上、若き日の記録。歌舞伎や舶来の文化、当時の大学の雰囲気など、活き活きと感じ取れ、この時代の理解も深まった。ただ、当時の話と現代の北村先生のお話が混じってしまうところがあり、読みにくいと思ってしまう箇所があって、そこが残念だった。ともあれ、資料的な価値もあるのではないだろうか。 2015/04/10

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