水色の娼婦

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水色の娼婦

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  • サイズ B6判/ページ数 396p/高さ 20cm
  • 商品コード 9784163823102
  • NDC分類 913.6
  • Cコード C0093

出版社内容情報

日本人の母を持つタンゴの名手・エヴァは日本陸軍の諜報員・吉川に魅入られ、スパイとして欧州での諜報・謀略に加担させられていく。

日露戦争で活躍した軍艦「日進」と「春日」。この二隻はアルゼンチンから日本に寄贈されたもので、その縁で来日したアルゼンチンの海軍軍人と知り合った一人の日本人女性が、ブエノスアイレスへと渡ったことは歴史上の事実である。そのふたりの間に生まれた、エヴァ・ロドリゲスが本書の主人公。早くに母を亡くした彼女は、ある事件をきっかけに自身の出生の秘密を知り、タンゴ・ダンサーとして、娼婦として生きていくことを決めた。
やがてエヴァは活躍の場を、ベルリンへと移し、老舗のタンゴ・バー「エル・スール」を拠点に踊り、国内外の要人たちと夜を共にする。そこで出会ったのが、昭和通商なる会社に勤める吉川公夫だった。日本陸軍の予備役であるという彼に運命を感じたエヴァは、その関係にのめりこんでいくが……実は、吉川の正体は諜報員であり、国際社会から孤立を深め、対ソ連、対アメリカとの戦争へと突っ走る勢力に必死の工作を繰り返し、時には多重スパイも辞さない危険な男だった。
愛する吉川のため、あるいは母のルーツで祖国・日本のため、エヴァは時にナチス政府の要人から、時にゲシュタポ(秘密警察)の高官から、ベッドの中で偽りの愛をささやき、情報を引き出すようなる。エヴァだけではなく、他にも同じような女スパイが、当時のヨーロッパでは暗躍していた。また吉川は、同じ志を持つ者たちと密かに通じ、エヴァにさえ知らせず、ドイツ国外でも精力的に活動を行うが、日本の対ソ・対米戦争への流れを止めることができず、やがて二人に別れが――。
そして半世紀を経て、ベルリンの壁の崩壊後、年老いたエヴァから、その驚くべき人生を聞き取ることになったのは、ある日本人男性ジャーナリスト。その姿は近代史の闇をノンフィクション・ノベルに仕立て、世に問うてきた著者自身の姿にも重なる。エヴァが、吉川が本当に守ろうとしたものは何だったのか? 改めて平和な現代に問いかける傑作長編!

内容説明

アルゼンチンのブエノスアイレスで育ったエヴァ・ミツ・ロドリゲスは、ある事件を機に、自らの出生の秘密を知る。父は海軍大臣、母は日本人でラ・プラタ川に身を投げていた。やがて美しいタンゴダンサーに成長した彼女はベルリンの老舗「エル・スール」で踊り国内外の要人たちと一夜を共にしながらも、謎めいた日本人男性に心を奪われてく…。

著者等紹介

西木正明[ニシキマサアキ]
1940年、秋田県仙北郡西木村生まれ。秋田高校卒。早稲田大学教育学部中退後、出版社勤務を経て、80年より作家活動に入る。デビュー作『オホーツク諜報船』で日本ノンフィクション賞新人賞受賞。88年「凍れる瞳」「端島の女」で直木賞を受賞する。『夢幻の山旅』で新田次郎文学賞、『夢顔さんによろしく』で柴田錬三郎賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。

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感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

マムみかん(*ほぼ一言感想*)

18
アルゼンチンと日本のハーフ女性エヴァ。 タンゴダンサーであり、政財界の著名人やナチスの高官を相手にする高級娼婦でもあった彼女が語る、第二次世界大戦前後のドイツをを中心とした歴史秘話…。 ちょうど『HHhH』を読んだばかりなので、こちらはフィクション仕立てとはいえ、同じ時代のヨーロッパ情勢やエヴァの恋人である日本人スパイ吉川の行動など興味深く読めました。 ハイドリヒも、エヴァの顧客としてチラっと登場(笑)。 波瀾万丈なエヴァの人生が幸せだったのかは分かりませんが、彼女の生命力の強さに救われます☆2013/11/14

a*u*a*i*n34

12
久しぶりの西木さん。期待していたのですが、盛り上がりに欠けたままラスト。最後に明かされる事実にもなんだか。あと、この題名と装丁も。2019/08/02

よっちゃん

12
スパイに女はつきものと言え、いつもながらのハニートラップ。男のために他の男から寝物語で情報を聞きだすだけの役割なのだから、日本のスパイってこれだけしか能がないのだろうかと、あきれ返ってしまう。この作品が光っているのは当時の各国の夜の社交場、風俗のディテイルだろう。アルゼンチンやフランス、ドイツ、オランダ、トルコ、エジプト、北アフリカ。ここに実在の人物を多数登場させ、知る人ぞ知るエピソードを織り込み、いかにも物語が史実であるかのように読者を引き込ませるところ、これぞ西木正明流のノンフィクション・ノベルだ。2013/11/03

雨猫

11
第二次世界大戦下のドイツ。日系アルゼンチン美女のエヴァと日本のスパイ吉川の恋。実在の人物や史実も出てくるのでノンフィクションぽいところは好き。あの大戦の裏で各国の諜報機関が戦争に勝つために、または戦争を食い止めるために、こんなふうに暗躍していたのだろうか。エヴァの気持ちはよく分かるが、吉川の気持ちは描かれない。女と任務の板挟み、祖国を思う気持ちとかもっと葛藤や苦しみがあると良かったんだが。☆3.72015/11/17

くみこ

8
日本人ジャーナリストがベルリンで取材した老女エヴァの話。妖艶さの残るエヴァは、かつて有名な人気タンゴダンサーであり、各国の要人を相手にする娼婦でもあった。第二次世界大戦へと至る時代、彼女の周りで繰り広げられた諜報員達の活動と、日本人吉川との恋を語るエヴァ。1900年代の時代背景を垣間見た気分です。そして吉川との4年間の恋が、今なおエヴァの中で息づいているのがとても切なかった。2015/11/22

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