出版社内容情報
なぜ、あのような罪を犯してしまったのか。なぜ、オウムに入り、そして離れたのか。自らの全存在を賭して拘置所で書き綴った手記
内容説明
「坂本のときはうまくいったんだが…」。このつぶやきが、麻原彰晃の仕掛けた最後のワナだった。優しく有能で使命感にあふれる心臓外科医は、なぜオウムに入り、狡猾な教祖に騙されていったのか。そして、なぜ地下鉄にサリンをまいてしまったのか。あらゆる疑問に真摯に答えるべく、獄中で全存在を賭して綴った悔恨の手記。
目次
第1章 医師になるまで
第2章 阿含宗との出会い
第3章 オウム真理教入信
第4章 出家生活
第5章 「踏み絵」と「慣らし」
第6章 仮谷さん事件まで
第7章 地下鉄にサリンをまく
第8章 逃亡、逮捕、そして自供
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Natsuko
17
図書館イベント棚より。医者の家に生まれ、自らも医者を目指した著者。学生時代に「人間にとっての幸福」「世の中のすべてを包括的にかつ総合的に説明できて解決に導くような法則」について考え、それを「人生のテーマ」とした。宗教哲学の道にも学びは深く、阿含宗と出会い、阿含宗の教えより実践的な麻原彰晃に傾倒していく。盲目的であった著者が、尊師麻原に「踏み絵」をされ、疑いを持っては強く否定し、無理やり自分を納得させながら組織のために悪事に手を貸し、医師として強く葛藤する。人間の怖さが淡々と語られ、ずっしりきながら読了。2021/12/05
あっきー
10
✴3 ブッダの原始仏典(三宝)、チベット密教の瞑想、ヨーガの身体変容のいいとこ取りをしていたので一時期は宗教学者やマスコミから評価を得ていた、がそれにごてごてハルマゲドンやポアやフリーメイソンの陰謀など阿呆なことを付け加えたためにサリン事件などで大勢の犠牲者が出てしまった、医師であり、大体の裏事情と元ネタを見通していながらそれでもオウムを守りたいと嵌まって抜けられなかった、詳細で読みやすいそして最悪の内部記録だ2019/03/24
みなみ
8
年齢が高く、職業的なキャリアもあった彼の、オウム内での対麻原の(微妙な)立ち位置が分かり興味深い本だった。また、著者が自らの幼少期を振り返った章が印象深い。ほとんど文学と言ってもよいほどに情緒にあふれて美しく、高い教養を感じさせる(その後には、そんな人がなぜ……という”慣用句”が続くわけだが)。他の方の感想に「この林さんと言う人は、のび太がお医者さんになったような、そんな不安感がある。優等生なのだが、心のどこかでジャイアンの存在を待っている」という記述があり感心。言い得て妙だと思う。2015/12/24
yummy
4
オウムの前身?の宗教に入信するところから、逮捕後の懺悔まで、執筆時のいくらかの言い訳とも取れる説明付きで。やったことは到底許される事ではないんだけど、本人の純粋さというか、医師として救いきれない命があること、自分はまだ充分ではないという自覚、すべてを麻原に利用されて、それを疑いもせず(思えば、疑うチャンスは幾度となくあったようなのに)、道を誤ってしまう恐ろしさがある。このエネルギーを良い方向に出せたなら素晴らしい人となったであろうに。2018/09/08
秋津
4
地下鉄サリン事件などに関わったオウム真理教の元幹部がつづった手記。医師として働くうち、医学でカバーしきれない「死」について考え、宗教にその解答を求めるようになったこと、患者の治療方針や薬物使用など、医学的な分野については尊師である麻原彰晃に対しても異論を述べる一方で、教義については、疑問を抱きつつも最終的には「尊師には考えがあるのだ」で納得してしまい、深みにはまっていく様子などが記されています。無知であることはもちろん、知識があることも道を誤った際の軌道修正を難しくさせることがあるのだなと思うなど。2014/03/09