出版社内容情報
ゴジラ、ヤマト、ナウシカから東京ラブストーリーまで娯楽作品に無意識に込められた戦後民主主義の思想を追い八〇年代を総括する
内容説明
ヤマトの「宇宙愛」とは何か、タエ子の「農村」とは何か、ゴジラの「復活」とは何か、ウルトラセブンの「明けの明星」とは何か、アリオンの「革命」とは何か、そして80年代の日本とは何だったのか。「愛と正義」の謎を解く。
目次
1章 二つのヤマトとナショナリズム
2章 ナウシカとタエ子、それぞれの矛盾
3章 ゴジラはなぜ日本を襲うのか
4章 ウルトラマンの夢と挫折
5章 「十二歳の少年」の堂々めぐり
6章 明日の影
作品を破綻させないための20の法則
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ころこ
39
連載の前半と書き下ろしの後半で文章のテイストが違うんじゃないかと思います。後半は左派の反権力、統治機構の確立の無自覚さを批判している戦後民主主義批判で、イデオロギー批判として明確です。前半は『宇宙戦艦ヤマト』『おもひで』『ゴジラ』『ウルトラマン』などのコンテンツ批評がとにかく面白く、連載ということで緊張感のある文章です。単なる戦後民主主義批判ではなく、戦後民主主義的な心情を内面化した地点からその批判を行っている裏切りや後ろめたさのような感情が土台にあり、加藤典洋風にいう「ねじれ」が、今度は戦後民主主義の方2022/05/28
ことぶき あきら
6
第一章は宇宙戦艦ヤマトと沈黙の艦隊、第二章はおもひでぽろぽろと風の谷のナウシカ、第三章はゴジラ。柳田理科雄の空想科学読本という本がありますが、本書の前半はその社会科学版といった感じです。そのまま軽く進むかと思いきや、後半が秀逸です。戦後民主主義を「国家がなくても社会の秩序は維持される」という理念と規定した上で、戦後民主主義とファシズムとの親和性について検討しています。小市民的日常が絶対的な善とさせるところに共通点があると。私は戦後民主主義を評価しない立場ではありませんが、本書の内容は非常にスリリングでした2018/08/03
まめなやつ【多摩市多摩センター整体マッサージ】
4
子供向けのエンターテイメントをここまで深読みすることないんじゃないかと思ったが、内容についてはまったく反論できないほど正論。 愛だ正義だといいながら波動砲をぶっ放したりスペシウム光線を発射したり、そうかと思うとガミラスと仲良くなれると言ってみたり怪獣を助けてあげたり…愛と正義の境界線ってどこら辺りにあるんだろう?と子供心にも不思議だったが、なるほどそういうことかと納得した。 戦後民主主義の呪縛って強力だなと思った。2016/02/10
がんぞ
3
前半は「右翼的」オピニオン誌『諸君!』に掲載、平和主義者の反感を買ったが、今や常識的見解となっている。「放射性物質を含む大気でしか生きられないガミラス人とは共存できない」「農業は最大の環境破壊であり、自然保護と両立しない」「核兵器を平和主義の日本が独占すると平和になるという思い上がりの漫画が人気とは?」「日本だけが平和を望んでいるのではない」「戦後民主主義は核兵器には対抗できないから“何もしなくても良い”アメリカがなんとかしてくれるという幼児退行」「権力は不快だが社会にとって必要なことを断行する為にある」2021/01/12
bibliophage
3
ある意味バイブルです2014/05/07