出版社内容情報
夫のため田舎に移り住んだ梨々子が妻、母、女として迷いながら進む日々を丁寧に綴る。注目の著者がすべての女性に贈る“私の物語”
内容説明
田舎行きに戸惑い、夫とすれ違い、子育てに迷い、恋に胸騒がせる。じんわりと胸にしみてゆく、愛おしい「普通の私」の物語。
著者等紹介
宮下奈都[ミヤシタナツ]
1967年福井県生まれ。上智大学文学部卒業。2004年「静かな雨」で第98回文學界新人賞佳作入選、デビュー。2007年、初の単行本である『スコーレNo.4』が話題を呼ぶ(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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風眠
205
旦那がうつになったことがきっかけで田舎に引越し、多少の不満は抱きながらも、自分たちの居場所を見つけていく家族の物語。ドラマチックでもない、大団円で締めくくられるわけでもない。どこにでもいそうな家族の10年が淡々と綴られている。それでも、淡々とした中にもいろいろあって、ちょっとしたことの積み重ねが家族の歴史になっていくのだなぁと感じた。前に住んでいた所での人間関係がだんだんと無くなっていき、今いる所に愛着を感じて馴染んでいく。その感じがやけにリアルで、そうそうそうそう!って、共感するところがたくさんあった。2012/10/25
七色一味
143
読破。不本意な形での「都落ち」に戸惑いながら夫の田舎へと引っ越すことになった一家。住む環境に戸惑い、環境に馴染めない子どもたちに振り回されるなかで出会ってしまったひとりの男性。なんという危うさ──束石の下がサラサラと崩れていく砂のような、不安定さを内包した一家の姿──。10年を経て、都会から訪れた母親と相対した時に、いつの間にか身に着けていたしたたかさ──。家族の絆の強さがあったわけでも、誰かが家族を守ろうとしたわけでも、コレといって何もないのに、それでも、最後、気持ちが良かった。2013/06/12
おかむー
110
欝になって会社をやめた旦那の田舎での十年間の妻の揺れ動く心を綴った物語は、特徴的なタイトルのユルそうな感じに反してとても読みづらい。『もうすこしです』。旦那が欝になったことが物語のきっかけなのだが、叙述トリックかなにかで欝なのは実は妻のほうでしたという結末かと思うほど、妻の不満と悩みと迷いに満ちた自分探しが延々と続く展開は、要所要所でのソフトタッチな言葉では追いつかないほど重々しくて読み進めるのにとても消耗するのですよ。最後には「ありのままのワタシ」にたどり着いてめでたし…でも少しもスッキリできませんなぁ2014/10/17
nyanco
110
幼稚園児と2時間おきに泣く乳飲み子を抱え家事に育児に追われる生活。あんなに好きだった夫なのに、彼のことを心配する時間はあまりなかったかも、そう一日8秒くらいだったか…。子育てをしている、そしてしてきた女性に沁み込む言葉です。一生懸命頑張ってきたのに、夫が鬱病になり、田舎の帰ろう…と言いだす。○○ちゃんのママでしかないけれど、それを失うと繋がりが何も無くなってしまう、自分は何者なのかという恐怖。ママ友を失った彼女は、その後のメールでそれがくだらない付き合いだったことが解る、続→2010/11/19
ひめありす@灯れ松明の火
108
旦那さんの鬱病で田舎へお引っ越しした梨々子しゃん。あんなのは嫌よでも私のせいじゃないわって、色々なものを否定して一番田舎の価値観を見ていたのはきっと彼女なのだろう。じゃあ、その間に見失っていたのは何だろう。中の上の恵まれた生活かな?夫への愛かな?二人の子供達への関心かな?特に二人の子供達はだんだん自閉の傾向が見えてきたので、もっとちゃんと見てあげてと思いました。学校へ行っても頭を下げるだけとか、一年に何回かしか会話が成り立たないとか、おかしいなと思うはずの所、沢山あるのに。結局は全部、自分の為って所かな。2012/02/18