出版社内容情報
謎多き祖父の戸籍──祖母の予期せぬ“帰郷”から隠された過去への旅が始まった。満州、そして新宿。熱く胸に迫る翡翠飯店三代記。
内容説明
謎の多い祖父の戸籍、沈黙が隠した家族の過去。すべての家庭の床下には、戦争の記憶が埋まっている。新宿角筈『翡翠飯店』クロニクル。
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乱読で活字が躍る本棚
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ミカママ
223
世の中、逃げてばっかりはだめかもしれないけど、ときには逃げてもいいんだよな、ってそっと背中を撫でてくれるような小説。角田さん、お若いのに、よく調べて書かれました。時代があっちゃこっちゃ飛ぶのは普段は好きじゃないんだけど、この小説に限ってはOK。それどころか次を読むのがもどかしく、あっという間に長編読み切ってしまいました。いいなぁ、角田さん。2013/11/11
しろいるか
137
著者渾身の一作ではないだろうか。満州開拓団としての渡満から始まる藤代家の歴史と、平成、再び孫や子と中国を旅するヤエの多くは語られない想いとが交互に織り成され、哀しみも喜びも淡々と、その激動の時流にひたすら流され続ける壮絶な人生ドラマに圧倒された。脈々としたルーツが無く出来上がった家族は、樹上の家のように土台が無く揺れる。ツリーハウスというタイトルが秀逸だ。ファミリーツリーという言葉も浮かぶ。どこへいったってすごいことなんて待ってない、同じところには帰ってこられないというヤエの言葉に人生の重みを感じる。2011/11/20
ちはや@灯れ松明の火
118
その木は絶えず揺さぶられてきた。国ごと覆い尽くす大嵐に、時折吹き荒む向かい風に。大家族が営む中華料理店床下に眠る語られぬ歴史。故郷を捨て大陸に流れてきた根無し草ふたつ、戦火を逃げ延びるため寄り添い絡みあう。帰る場所はなくとも、居場所は創り出せる。幾つもの新たな命が芽吹き、幾つかは花開くことなく散り落ちた。けれど、歴史は続いていく。生きるために逃げ続けてきた。地面に張った根はなくとも、希望を掴むが如く空へと伸ばす枝はある。生きていく。新たな翡翠の若葉をそよがせて、彼等が歩んできた年輪をその奥に刻み込んで。 2011/10/16
nyanco
116
祖父の死をきっかけに一家の物語が始まる。『すべての家庭の床下には、戦争の記憶が埋まっている。』この言葉、印象的。誰彼構わず人を逗留させる祖父母、この理由が解る過去のくだりが見事。2世代目の話も実に面白い。どこにでもありそうな、平凡な家族の過去が明らかになっていく。実際にあった事件とこの一家を絡めて描いて行く感じも実に巧い。ドロリとダークな作品の角田さんらしさは無いが、誰にでもどんな家庭にも物語があるという、この話はやはり角田さんにしか描けない作品でした。 続→2010/10/30
団塊シニア
102
親子三代にわたる家族の歴史、それぞれの家族の物語、深く、重い作品2014/10/23
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