出版社内容情報
ここが文学の極北!書くことの不可能性との苦しくも笑いに満ちた闘いの記録。あらゆるメーターを振り切る芥川賞落選後初作品集。
内容説明
俺の名前は草吹大輔。ノンフィクション作家だ。三ヶ月前に全国の引き篭りの若者たちのインタヴューをまとめた『引き篭り悲喜こもごも』を出版し、それが見事に大ベストセラーとなり、各マスコミから時代の寵児と、祭り上げられたばかりだ。(表題作「ニートピア2010」より)。あらゆるメーターを振り切る、13の小説を体験せよ。
著者等紹介
中原昌也[ナカハラマサヤ]
1970年、東京都生まれ。2001年『あらゆる場所に花束が…』で三島由紀夫賞、’06年『名もなき孤児たちの墓』で野間文芸新人賞を受賞。ミュージシャン(Hair Stylistics名義)としても活躍中(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
とら
33
三島賞野間文芸新人賞を受賞している中原昌也さん。「あらゆる場所に花束が……」が読みたかったのだけど、まあ図書館に置いてあった(中原さんの作品を生で見たのはそれが初めてだった笑)から読んでみた。大好きな舞城王太郎に類似しているカオスさがあるらしいから読んでみたけれど、思ってたのとはなんか違った!今小説を書いていることに対しての愚痴を時折挟んでくるのだ。小説家にとってはあるまじき行為であると思う。小説家になりたいって人多いだろうし。でもやっぱりそれを加えてもそれを覆す位の何かがあるのも確かなんだよな~。2013/06/11
harass
10
物語の筋が途切れてしまったり、何度も同じ文章が続いたりする。何度も作者の書くことへの愚痴が出てきてしまう。悪意をもったフレーズが延々と続く「誰が見ても人でなし」は素晴らしい。明晰な文章なのに目指すところがわからん文章を書くなと感心する。いつもの著者の小説だわと。生きる力になるとか読んだことでなにか読者にとって役に立つとか人生について考えるとかそんな小賢しい意図をあざ笑う小説集。2013/04/12
還暦院erk
8
図書館本。文学賞メッタ斬りの豊﨑由美ご推奨作品『誰が見ても人でなし』が読みたくて借りた。表紙は中原昌也画!で、例の『誰が』は「/」で区切られた見出しみたいな句が延々と続くところが凄い。ソローキン『ロマン』のラストみたいだけど『誰が』の方が多彩。脈絡無し。トヨサキ社長曰く「一文一文にコスト半端なくかかってる」…なるほど納得。トヨサキ社長は「虚ろな挨拶を反復」の断続的反復を推していたけど、わたしは「無言電話専用回線」「言葉による理解を超えた利益追求」などがウケた。失踪妻を探した主人公のラストは内緒ね♡2022/06/10
crpsclr
5
「怪力の文芸編集者」、「放っておけば、やがて未来」という題名や、『引き籠もり悲喜こもごも』というフレーズなど、日本語の可能性を感じさせる。内容は暴力的で反復が多いのに、端整な文体なので読み疲れない。ところどころ作者が登場し、「金を稼ぐために原稿用紙のます目を埋めているだけ」と言うのだが、正直で倫理的な態度だと思った。二番目と最後の短編に出てくる怪力の文芸編集者安藤が印象に残った。「誰も映っていない」における、猫についてのちょっとイイ話が、グロテスクな奇譚に変化する様が素晴らしい。何度でも読みたい日本語。2011/04/07
不純
4
『名もなき~』から続けて読んだのですがこちらの方が1話1話のボリュームがあり且つ途中で話が逸れまくるので読み終わるのには難を要しだいぶ時間がかかってしまった。作家としての愚痴がたびたび見えるあたりのくだりは同じような内容でも何回読んでもおもしろい。粗暴ながらも文章のリズムは小気味よく、同じフレーズが何度も繰り返し出てきたりするのはリフレインのようで、理解が追いつかなくても感覚で読むことができなんとなく楽しい、といった気分になる。心の叫びとも小説とも散文詩とも単なる愚痴とも読める、闇鍋のような作品集。2013/05/14