出版社内容情報
『蝉しぐれ』『たそがれ清兵衛』など数々の名作の舞台となった架空の美しき藩、「海坂(うなさか)藩」。その海坂を舞台にした短篇を集めた夢の一冊。
直木賞受賞の「暗殺の年輪」から、「竹光始末」「泣くな、けい」、そして晩年の「静かな木」まで、全二十篇。没後十年を機に実現した待望の作品集です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ぶち
78
【海坂藩城下町 第10回読書の集い「冬」】架空の美しい藩・海坂藩を舞台にした短編 21編のうち『暗殺の年輪』『相模守は無害』『唆す』『潮田伝五郎置文』『竹光始末』など 10編が収録された上巻です。どの短編でも、男たちは矜持を守るために闘い、女たちは悲恋に涙します。また、そこには下級武士あるいはその家族であることの悲哀が流れています。そこが、読んでいて感慨深く、余韻が残ります。その悪戦苦闘振りがときには滑稽にすら思えたりもしちゃいます。そこがまた、藤沢周平作品の魅力にもなっているんですね。2025/01/25
モトラッド
28
★★★★☆海坂藩を舞台にした短篇を、上巻10作、下巻11作にまとめた愛蔵版。装丁も、とても粋です。上巻は、暗殺の年輪、相模守は無害、唆す、潮田伝五郎置文、鬼気、竹光始末、遠方より来る、小川の辺、木綿触れ、小鶴、を収録。どれも、とても良いです。海坂藩しばりで並ぶと、また違った趣が感じられるのが、不思議です。文字が大き目なのが嬉しい。男の手のひらサイズで、寝る前に読むのにちょうど良く、至福の時を過ごせます。(解説は下巻にあり)2025/01/27
matsu04
24
海坂藩モノの初期短編10編。はっきり言って今イチのものもないではない。が、良いものは何度読み返してもやはり良いのである。「暗殺の年輪」「相模守は無害」、初読み時の体の震えが蘇る。「遠方より来る」も何とも良い感じだ。そして「小川の辺」、短編とは思えぬ迫力でぐいぐい引き込まれてしまう。これぞ藤沢周平と言うべきである。(再読)2022/10/12
松風
23
【直木賞】の「暗殺の年輪」は、藤沢周平流ハードボイルドの基本形。そこでは〈不幸〉の苦味が深入りコーヒーの快さを醸す(時代小説だが煎茶の〈渋〉や日本酒の〈辛〉ではない気がする)。以前訪れた鶴岡の街を思い出しながら読んだ。「唆す」「小鶴」が好き。【イベント寒梅忌】http://i.bookmeter.com/event/event_show.php?id=9732014/01/22
Kira
19
図書館本。上巻には七つの短編集から海坂藩もの十篇を収録。七つの短編集のうち六つが手元にあり、十篇のいずれも一度は読んだことがあるというのに、「海坂藩」というキーワードにはこれまで関心がなかった。でも、ひとたび興味を持って注目すると、海坂藩というのは架空のものながら、なかなか問題の多い藩だなと。問題が多いからこそドラマも生まれるわけだけれど、住んでみても幸せになれそうな気がしない。それなのに何だか愛着がわいてくるのはなぜなんだろう。下巻を読むのが楽しみ。2022/12/02