内容説明
明治十二年、今をときめく政商・藤田伝三郎に突然襲いかかった贋札作りの疑惑!時の明治政府を震撼させた藤田組贋札事件の真相とは。維新前後の激動の中で“光”と“影”の宿命を負った二人の友情と別離、そして対決。
著者等紹介
北森鴻[キタモリコウ]
1961年、山口県生まれ。駒沢大学文学部卒。編集プロダクション勤務を経て、執筆活動に入る。1995年、明治初期の名優沢村田之助を素材にした時代推理「狂乱廿四孝」で第六回鮎川哲也賞受賞。1999年、「花の下にて春死なむ」で第五二回日本推理作家協会賞を受賞
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感想・レビュー
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星落秋風五丈原
12
一本欠けているという市井の噂を聞いた傅三郎は、一人の男の事を思い出す。 幕末から明治にかけて動乱の日本を生き抜いた藤田傅三郎の謎多き生涯を描いた歴史ミステリー長編。 幕末の有名人や明治の元勲が続々出てくるからドラマ向きかもしれません。明治は江戸とは違い近代化された、とありますが、その過程には割り切れないもの、闇に消えたもの、数々あったことでしょう。歴史は決してきれいごとだけでは進んではこなかったのです。その事を対照的な生き方をした親友の2人の男を主人公に据えて、描いています。 2005/09/18
ゆき
8
人の下敷きになっていく人。歴史に名を残す人。光と闇と。幕末から維新、明治へと偽札事件の真相。2015/08/10
藤枝梅安
6
幕末から明治にかけての混乱期を生き抜いた二人の男を通して、 利用する側とされる側が入れ替わる激動の時代を描いている。 この時代の人々のエネルギーを感じさせるとともに、政治家や官僚と庶民の生活と意識のズレを的確に描いた作品である。2009/08/30
りらりら
4
幕末から明治へ 時代の表と裏、人の表と裏を表を蜻蛉(トンボ)とするなら、裏ははかなくふらふらと飛ぶ蜻蛉(カゲロウ)にたとえた時代小説。北森作品を代表する作品だと思います。2016/08/18
tora
3
亡き北森氏の作品。主人公を始め長州藩が舞台の作品であるが北森氏が山口県出身と知り納得。得意の維新明治期の作品だけ合って主人公の藤田、井上馨などとの絡みで非常に読み応えのあるミステリーとなっている。主人公とその影となって生きる者の愛憎。実際にあった謎に満ちた贋作事件であるが案外こういう事もあるかもと思わせる作品となっている。暁英が絶筆となってしまったがもっともっと幕末維新期の北森作品が読みたかった・・・残念2010/07/19