内容説明
あの夏、ぼくは十五歳だった。父さんと二人、戦争の音が遠く響く森で暮らしていた。そして、僕はあの人に出逢った。炯る目で遠くをみつめる、あの人に―性と死を知り、大人になる季節を流麗に描く傑作長篇。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
林 一歩
17
一昔前のイタリアの映画のような感触。歳上の女性に憧れを抱く年齢でも無くなったし、そんな頃の想いすら思い出せないのでいやはやなんとも。ただ、エロスは嗅覚だなと妙に納得。2014/10/13
やまちゃん
2
短く、駆け足で過ぎたけれど、濃密な時間を過ごした2人に、このラストはあっけない気がしたんですがやはり、こうなるしかないかも…と納得しました。森の中のキラキラした、幻想的で眩い描写に溜め息ばかりついていました(^^)日本語って、本当に美しいな!!って思います。こんな自在に多彩に、自然も、生々しい心の動きも表現してしまうなんて、久世さんのこういうところが大好きで、たくさん読んできました。作風自体が大好きなので、連続して読んでも飽きることがありません(笑) 少年と父親、謎の美女というテーマも良かったです。2014/09/15
ジョバンニ
1
セックス狂いの女性とそれに翻弄されている、もしくは図らずも翻弄している男達の話。と聞くとゲンナリですが、魔術的な文章で美しく怪しく儚い、まさに耽美な世界を構築している。水や濡れた草木の香りが、本の中から匂い立つかのようでした。それにしても、葉子があまりにも淫奔で嫌悪感を抱いてしまった。2013/10/22
michio-atsuko
0
なんて綺麗な物語。戦争の匂い、木々の匂い、翻るスカートから香る女の匂い、焼け焦げた匂い。古い外国映画のような、美しい世界。久世さんの言葉は本当に素晴らしい。2014/12/12