出版社内容情報
殺人現場に残された血まみれの指紋はなぜか自分のものだった──暴力小説を書く"別名義の自分"が存在を得て本来の自分を苦しめる
内容説明
ジョージ・スタークなる別名で暴力小説を書いていた純文学作家サド・ボーモントは、そろそろ本来の自分にもどりたくなった。そしてペンネームを葬ることにし、墓碑銘にこう書いた。ジョージ・スターク1975~1988年あまりいいやつではなかった。これがすべての始まりだった。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Ayah Book
14
悪逆非道な殺人者は、果たして自分とどんな関係があるのか?スティーブン・キングのモダンホラー。89年作。最近80年代流行ってますが、これはまさに定番のやつ。序盤の感じから展開は大体想像がつくけれども、王道を突っ走る特急列車みたいにずっと勢いが妨げられず最後まで面白い。カバーのスズメが可愛いけど。。。ラストは。。。圧巻でした。2020/10/19
志田健治
11
作中でも意識している通り大衆小説の匂いがプンプンして、特にスターク側の描写がハラハラしてぐいぐい読ませます。しかしこれはそんじょそこらの大衆小説じゃないぞと読んでいて気がつきます。ちょっとした皮肉も含まれているのでしょうか。実に緻密な技法がちりばめられています。メタファーの配置(双子とかスズメとか)が実に神話的で標題よりも深いテーマを感じます。そして「書く」ということを考えさせられます。キング氏がどれだけ「書く」ことに人生の重きを置いているのか理解できるような気がします。確かに霊媒めいた行為かも……。2015/11/15
san0604
8
こちらもハードで出版された時に購入した本。 これも、好きだなぁ また 読もう(笑)
オーウェン
7
映画の方を先に見たので、基本はほとんど変わりなく進んでおり、原作に忠実な映画化ということが分かる。 作家が人気シリーズを終わらせようとするが、そのキャラが現実世界に現れ、作家にシリーズを続けさせるため周囲の人間を惨殺していく。 犯人の姿は早くにばらされており、いかにしてキャラと折り合いをつけるのかがサスペンスになっている。 ただしこの展開は同じキングの「ミザリー」と同じであり、そのせいかキング原作の中でもほとんど知られてないのはしょうがない。2020/08/14
azimuth
4
残虐小説執筆用のペンネーム、スタークに墓を与え、文字通り葬った純文学作家のサド。彼の闇の半身スタークは肉体を得て蘇り殺戮を繰り返す。宿願はただ一つ、自分の物語を書くこと。スタークは無から突然発生した悪意ではなく、サドが自分の中の忌むべき要素を切り離して別の人間として形を与えたもの。そのことをダブルでもツインでもなく、ハーフという語の選択が強調する。その共有された認識が、スタークに奇妙に惹かれるサドと、サドの良き性質を多少なりとももちあわせるスターク、という未分化性の薄ら寒さを高める。結末の不穏さがよい。2015/02/20