出版社内容情報
野望と敵意溢れるニューヨーク。現代をまるごと捉えるノンフィクション的手法の迫力! 21世紀の小説の方向を示唆する待望の巨篇
内容説明
多層化した現代は、もはや文学の手にあまるのか。ニュージャーナリズムの旗手トム・ウルフが、あえて小説の形式を選んだ答がここにある。21世紀文学の方向を示す野心的大作。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
まふ
102
シャーマン・マッコイは黒人街の優秀な少年を意識不明状態にさせたことにより、人種差別反対運動指導者ベーコン牧師の扇動や住民の票が欲しい改選間近の地方検事ワイスの思惑もあり起訴される。タブロイド紙のファロー記者はセンセーショナルな記事を書いて大衆を煽る。結局、マッコイは妻、娘と別れ、恋人にも捨てられ、家も保釈金支払いのため手放し、「職業は囚人」と嘯くまでに零落れる…。「アメリカのディケンズ、バルザック」とおだてられるこの作品もアメリカらしく終わった。まことに「虚栄」の顛末であった。G475/1000。⇒2024/03/31
NAO
79
ハーレムでの暴動シーンから始まるこの話は、舞台となっているニューヨークにおける格差がいかにひどいものであるかを示している。そんなニューヨークの格差の頂点にいる者が、黒人少年轢き逃げ事件を起こしたら、どういったことになるか。 頂点になど立てない者たちは、頂点に立つ者の不幸を心待ちにしているのだから。もちろんシャーマンは罰せられるべきだが、さまざまな人々の思惑のいけにえのようになってしまっているのが、なんとも哀れだ。2021/02/24
Ryuko
29
投資銀行に勤めるシャーマンは、人妻との逢瀬中、誤って黒人居住区に入り込んでしまい、パニックのあまり若者をひき逃げしてしまう。実際にその時運転していたのは、不倫相手であったが故に、届け出ることができなかった。イギリス出身のジャーナリストくずれ、地方検事、黒人たちの指導者などいろいろな面々の思惑が絡み合い、真実とはちがう事実が出来上がっていく。主人公は最低の男でその転落に値するが、その他の人々も決して、共感できない。特にジャーナリストくずれが、ピューリッツア賞って、、どうにも納得できない終わり方。2017/02/04
shiggy
4
80〜90年代の時代の匂いや雰囲気がとても伝わってくる。ジャーナリストだけあって、描写力が素晴らしい。とても面白かった。最後はシャーマンを応援したくなった。邦訳されてるのは少なそうだけど、他の作品も読んでみたい。2021/09/30