出版社内容情報
〈ローカス賞SF長篇部門受賞〉二つの言葉を同時に発し意思伝達を行う原住種族と人類が共存する辺境の惑星アリエカは、新大使の赴任によって激動の時を迎えた。現代SF界の旗手が描く異星SF
内容説明
遙かな未来、人類は辺境の惑星アリエカに居留地“エンバシータウン”を建設し、謎めいた先住種族と共存していた。アリエカ人は、口に相当する二つの器官から同時に発話するという特殊な言語構造を持っている。そのため人類は、彼らと意思疎通できる能力を備えた“大使”をクローン生成し外交を行っていた。だが、平穏だったアリエカ社会は、ある日を境に大きな変化に見舞われる。新任大使エズ/ラーが赴任、異端の力を持つエズ/ラーの言葉は、あたかも麻薬のようにアリエカ人の間に浸透し、この星を動乱の渦に巻き込んでいった…。現代SFの旗手が描く新世代の異星SF。ローカス賞SF長篇部門受賞。
著者等紹介
ミエヴィル,チャイナ[ミエヴィル,チャイナ] [Mi´eville,China]
1972年イングランド生まれ。2000年に刊行した『ペルディード・ストリート・ステーション』はクラーク賞ほかを受賞。『都市と都市』(2009)はヒューゴー賞ほか主要SF賞を独占した。2011年に刊行された『言語都市』はローカル賞を受賞している
内田昌之[ウチダマサユキ]
1961年生、神奈川大学卒。英米文学翻訳家(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
藤月はな(灯れ松明の火)
58
当初、唯一無二の分身によっての同時発声の言語やその言語と地球での言葉でのコミュニケーションをどのように取っているのかなどのイメージや状況把握が掴めなくて挫折しそうになりました。しかし、「嘘祭」以降からの嘘による言語の混乱とその発生源に対する麻薬的効果、暴動と崩壊への修繕工作とそれによって深まった混乱で一気にのめり込むことになりました。「はじめに言葉ありき」やサピアとウォームの言語習得などを考えると言葉によって人は自我を形成する。しかし、チャーチルみたいに言葉の内容関係なく、人を支配できるならば自我はあるか2013/08/14
GaGa
37
小説は三次元化できないものがある。その典型的作品で傑作である。コミュニケーションの重要な要素である「言語」が初めて取り入れられたエイリアンが、それによって混乱し、混沌としていくさまは、世界各地で起きていた植民地時代を彷彿させる。独自の言語を持ってしまったことで、独自のアイディンティに苦しめられるというのもなかなか二次元的ながらリアルな構造を構築している。とにかく、正面から防御する間もなく頭をぶん殴られた感じ。こういうのは二次元であれば悪くないどころか快感だ(笑)2013/12/28
すけきよ
30
これは、早くも今年度もベスト候補に間違いないでしょう。ミエヴィルの特徴とも言える、(異形の)都市小説ではあるんだけど、そちらは比較的控えめ。現実しか表現できない(嘘がつけない)言語体系の異星人、というアイデアをどんどん推し進め、現実をロジックに合わせるための直喩という存在、嘘祭、言語麻薬による破滅の危機、さらには言語の進化、とSFならではの異世界を思う存分味あわせてくれる。非常に歯ごたえがあるものの、ここでしか見られない世界、そこでしか展開しない物語は「SFを読んだ~!」という満足感を得ることができる一冊2013/03/04
志ん魚
28
『都市と都市』の設定はスマッシュヒットだったが、本作もまた違った(ある意味さらにニッチな)味わいのぶっ飛び方。よくもまあこんな概念を生み出せるものである。かなりぶっきらぼうでハードボイルドな語り口なので、エンタメとしてはかなり読みにくいと思うが、せっかくのアイデアが嘘くさくならないためには、これくらいのほうがいいのかも。一生懸命説明しすぎるとボロが出そうだし。手放しで絶賛はできないけど、次作にも手を出してしまいそう。この人が繰り出すアイデアには、それこそ麻薬的な魅力がある。2013/04/10
かわうそ
22
最初は意味不明な世界の姿が少しずつ明らかになっていく快感とこの設定でしか成立し得ないダイナミックな世界の転換による物語の収束はSFならではの醍醐味を存分に満喫させてくれる。事実しか表現できない「ゲンゴ」なる言語についてはいろいろとツッコミたくなりますがそこはそれとして非常に面白かったです。2013/04/11
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