出版社内容情報
アパルトヘイト以前、以後──社会変革の渦中にある南アフリカ。プレトリアで農場を営む白人の家族とその黒人メイドとの間に交わされた土地の所有権をめぐる約束が、40年にわたり一家の運命を翻弄する。アフリカ文学の最先端にして英国最高峰ブッカー賞受賞作
内容説明
言葉がどこへ旅をするかは誰にもわからない。アパルトヘイト以前・以後―社会変革の渦中で激動する「奇跡の国」南アフリカ。プレトリアで農場を営む白人のスワート一家とその黒人メイドとの間に交わされた土地をめぐる約束が、30年以上にわたり一家の運命を翻弄する。圧倒的になめらかな神の視点で描かれる、アフリカ文学の最先端にして英国最高峰ブッカー賞受賞作。
著者等紹介
ガルガット,デイモン[ガルガット,デイモン] [Galgut,Damon]
1963年、南アフリカ・プレトリア生まれ。小説家、劇作家。ケープタウン大で演劇を学びながら、17歳という若さで小説家デビュー。その後、The Good Doctor,In A Strange Roomでそれぞれブッカー賞の最終候補に選出。第九作目となる本書『約束』が2021年のブッカー賞を受賞。ナディン・ゴーディマー、J・M・クッツェーにつづく、南アフリカ出身の作家で3番目のブッカー受賞者となった。ケープタウン在住
宇佐川晶子[ウサガワアキコ]
立教大学英米文学科卒、英米文学翻訳家(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
starbro
164
2021年ブッカー賞受賞作ということで読みました。 南アフリカ白人農場経営家族の大河小説、そんなに大きなドラマもなく、ブッカー賞のインパクトもあまり感じられませんでした。 https://www.hayakawa-online.co.jp/shopdetail/000000015826/2024/07/19
buchipanda3
103
国の転換期を跨ぎ、南アフリカの地を生きた白人一家の物語。ある意味平凡な家族、でもその人間臭い姿が心に強く訴えかけてくる。初めはその翻弄する文体に戸惑ったが、それが登場人物と読み手の心ををシンクロさせ、人生の苦みを肌で味わうかの読み心地としていた。家族が集まるのは葬式の時。死が歳月と互いの現状を照らし出す。悲しみもあるが残された者には現実が続き、変貌への困惑、後悔、しがらみが取り囲み、心は複雑。その中で唯一、尊さを貫くのは約束。それは覚束ない歴史から未来を少しでも確かなものへ。空と雨と風に委ねる場面が残る。2024/07/15
アキ
90
2021年ブッカー賞受賞作品。南アフリカの物語。約束とは、母親レイチェルが亡くなる直前、夫のマニに黒人のメイドであるサロメにロンバートの家を贈るように言い残し、マニが請け負ったこと。13歳だった末娘のアモールはそれを聞いていた。時代はアパルトヘイトの頃、現実には約束は実現されないことを彼女は知る。そして10年後父親が不慮の死を遂げる。「人の人生はなんと平凡でなんと奇妙なものだろう。そしてなんと微妙なバランスを保っていることだろう。」家族の変遷と南アフリカの社会の変化が交錯しラストまで人生を感じさせる小説。2024/12/02
たま
77
「…白人のスワート一家とその黒人メイドとの間に交わされた土地をめぐる約束が、30年以上にわたり一家の運命を翻弄する」という解説※に惹かれ読んだ。実際は、一家は翻弄されず約束を無視し続けるだけ。つまらない人間ばかり登場し挫折しそうだったが、約束への興味だけで読み続けたら最後の20頁は素晴らしかった。ある意味、ベタな終わり方だが、雨の描写で世界が広がる思い。【メイドは約束されたものを受け取ったのか?】から、南アの黒人は?戦後日本の私たちは?わたしは?あなたは?へと。。。2021年ブッカー賞受賞作。 2024/08/28
ヘラジカ
51
シンプルなテーマに独創的な作風。「地味」と言っても良いようなプロットも、洗練されていながら癖のある構成や話法によって、今まで読んだことがない唯一無二の作品へと変貌している。古典的な物語を超絶技巧の語りで傑作へと仕立て上げたもの凄い作品。陰気なシナリオや集中力を要する文章に嫌気がさしても最後まで必ず読み通すべきだ。”約束”という言葉が力を持つ終盤、それに続く最後の数ページは荘厳ですらあるのだから。好き嫌いはあるにせよやはり必読の海外文学なのは間違いない。流石はブッカー賞受賞作。2024/06/21
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