出版社内容情報
両親を亡くし、孤独を抱く善治。伯母夫婦に引き取られるが、そこで落伍犬の烙印を押された元警察犬のシェパードに出逢った。善治が散歩に連れてゆくが、犬はなぜか足に体当たりをしてきた! 犬に振り回されていた善治だが、ゆっくりと信頼関係を作ってゆき……
内容説明
善治は幼い頃に両親を失い、優しい伯母夫婦に引き取られるがどこか遠慮がちに生きてきた。自分が来たせいで、従兄の大我は高校卒業後すぐ犬の訓練所に就職したのでは?やがて善治が大学生になると、“落伍犬”の元警察犬のシェパード、アレックスがやってきた。任務の時に足を痛め、引退したという。引き渡し先が決まるまで大我が伯母に預けたのだが―なぜか自分が世話をするはめに。犬嫌いの善治が仕方なく散歩に行くと、リードを引っ張られ、振り回される。アレックスは足が悪いはずなのになぜ普通に歩ける?そこには哀しい理由が…善治はアレックスと一緒に他の飼い主に出逢い、犬への理解を深めてゆく。離れ離れになったフレンチブルドッグと少年の絆、障害物競技に挑むチワワと少女の苦闘。やがて善治はアレックスのおかげで、自身が抱え込んだ過去を乗り越える。
著者等紹介
青谷真未[アオヤマミ]
2012年、「花の魔女」で第2回ポプラ社小説新人賞・特別賞を受賞し、同作を改題した『鹿乃江さんの左手』でデビュー(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ゆみねこ
72
幼い頃に両親を亡くし、伯母夫婦に引き取られた善治。自分が来たために10歳歳上の従兄の大我は大学進学をせずに全寮制の犬の訓練士の学校に進んだのではないかと思う日々。大学生になったある日、訓練所を営むようになった大我から元警察犬のシェパード・アレックスを預かることに。とある理由から犬が大の苦手な善治、伯母夫婦には従順なアレックスは善治の言うことを聞いてくれない。犬と大人になりきれない善治がどうやって心を通わせてゆくか?楽しく読めた1冊。青谷真未さん、初読み。2024/09/06
シャコタンブルー
52
激しく吠えながら牙をむき出しにして犬が襲いかかってくる。そんな悪夢を見る善治は過去のトラウマで犬が大嫌いだ。それが元警察犬シェパードのアレックスを世話することになる経緯は巧みな心理描写と相まって無理がない。悲惨な事故で両親を失い、優しい伯母夫婦に育てられた善治の心の闇は深い。いつもどこかで遠慮して本当の家族にはなり切れない思いが強い。だがアレックスが来てから家族での会話や話題も増え次第に日常生活も変わっていく。犬と触れ合うことで素直に生きることの大切さや家族の温かさを知る。優しさ溢れる物語だった。2024/07/30
よっち
25
両親を亡くして優しい伯母夫婦に引き取られたものの、どこか孤独を感じていた善治が、落伍犬の烙印を押された元警察犬のシェパードに出会う青春小説。犬の訓練所に就職していた大我から一時的に預けられた、任務で足を痛めて引退したアレックス。犬嫌いの善治が世話をする羽目になって始まった、振り回されるようになっていく日々。離れたブルドックと少年の絆、障害物競技に挑むチワワとギャルの苦闘にも関わりながら、アレックスと共に過ごす中で自分がずっと抱え込んでいた過去にも向き合って、大切な絆を取り戻していった結末は印象的でしたね。2024/07/23
信兵衛
17
人と犬の強い繋がりが描かれるだけでなく、犬を大事に思うことによって自分たちも成長していく姿が見られるのが嬉しい。2024/07/31
雪丸 風人
15
主人公は事故で両親を亡くした少年。犬好き一家に引き取られて11年、本心を隠しつつ大学生になった彼を待っていたのは、恐ろしいほどの厄介事でした。生真面目に負い目を抱き続けてきた青年が、シェパードとの関わりを通して心を解き放ってゆく物語。主人公が自然な家族のありかたに目覚めていくまでの流れがよかった!犬とのビックリ主従関係は笑いを誘いますし、前のめり少年や、カッコイイ女子大生も面白い!訓練士をはじめ、根っからのいい人が脇を固め、盛り上げてくれるので、読んでいて癒されましたよ~。(対象年齢は13歳半以上かな?)2024/08/16