内容説明
からだを手入れし、歩く。ごくふつうの生活を、大切に生きる
猫の母子から教わったこと。山菜を採り、うどんを作る春の行事。同窓会嫌いの弁。本を棄てる話。滋味ふかい最新エッセイ集。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
kaoru
86
南木先生の本は同じような内容を綴っていてもどこか心和む。浅間山のふもとで医師として勤務しながら執筆を続けるうちに鬱を患い家族や同僚、飼い猫の力などによって少しずつ回復。「からだは機械ではなく、思うようにコントロ―ルできない自然そのもの」65歳で定年退職した後も非常勤医として新型コロナワクチン接種=後方支援に携わられたりしている。その間を縫っての執筆やうどん作りなどの料理。「包丁を握ってネギなど刻んでいると、なんだかとてもまともな仕事をしている気になってくる」文明が進み過ぎて地球も人も疲弊している今→2022/04/13
kei302
68
とてもよかった。たぶん、ほとんど認識されていないと思いますが、私の中ではネコ作家さんは南木さんです。 南木作品読者からの忠告:タイトルの「猫」に惹かれても手を出してはいけません。猫はほとんで出てきませんが、 『ダイヤモンドダスト』『医学生』『トラや』の3作とパニック障害うつ病を患った生活を綴ったエッセイを読むと文体のよさも内容も響いてきます。 ― 未来は明日ですら完璧に隠されていると了解し 夢など抱かず とりあえずいまを生きる ―南木先生、新作、お待ちしています。2022/04/16
明るい表通りで🎶
46
ごくふつうの生活を、大切に生きる。医師で芥川賞作家。パニック障害、うつ病を発症し、人間を見つめてきた著者の、慈悲ふかいエッセイ集。2024/12/08
明るい表通りで🎶
44
「よく、回復者のことばとして、うつ病は神様からのメッセージであり、病気になってほんとうに大切なことがわかった、病気になってよかった、という類のものがあるが、気分の変動が少なく、むしろ軽い躁状態くらいで一生を終えられたらそれに越したことはない。そういうひとたちに特有のある種の鈍感さを笑うのは、うつ病からの回復者としての謙虚さに欠ける。」「やはり過去は毫も懐かしくない。」2024/12/08
こまり
34
猫に纏わる小説かエッセイだと思って予約したら、そうではなかった。(いくつか猫の話もあったけれど。)南木佳士が医師であり、また芥川賞作家だということも知らなかったが、思いがけずとても良い本に出会った。日経新聞他の連載エッセイをまとめた本。表紙と裏表紙の猫の装画が又良い。文章に魅力があり深い思考が面白く、読み飽きない。映画化されている作品もあるらしく、原作を読んでみたくなった。「芥川賞は寝て書いても完成させられるが、直木賞はトラック数台分の資料を集めて読み込まないと書けない」その違いに成程と腑に落ちた。2022/04/13