出版社内容情報
遠い未来のスペースコロニーで、亡くなった叔母の弔いを巡る情景を描いた表題作のほか、商業媒体やウェブ媒体で発表した池澤春菜のSF短篇を集成。人間が異文化と接するときの情景や、未知なる動植物の生態をときにコミカルに、ときに抒情的に描き出す傑作集。
内容説明
叔母が空から流れたのは、とても良い秋晴れの日だった―静かに滅びゆくコロニーで暮らす女性ふたりが、叔母の弔いのために小さな旅をする表題作。きのこ―菌類を脳に埋め込むことが常識になった世界での青春譚「糸は赤い、糸は白い」。SFプロトタイピングから生まれた、AIをめぐる物語「Yours is the Earth and everything that’s in it」ほか、異国や地球規模の抒情、ユーモラスな快作まで、色鮮やかな傑作全7篇。声優、書評家、エッセイスト・池澤春菜、初の小説集。
著者等紹介
池澤春菜[イケザワハルナ]
ギリシャ生まれ。声優、歌手、エッセイスト。声優として数多くの作品に出演。「SFマガジン」での連載のほか、文芸各誌で文筆家として活躍。第20代日本SF作家クラブ会長(2020~2022年)。父は作家・池澤夏樹、祖父は作家・福永武彦(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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乱読太郎の積んでる本棚
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
mae.dat
281
7話短篇。SF風なんですけど、儂の知っているSFとは随分違う様で。文學の受け入れの懐の深さに、幾許かの戸惑いと悦び、そして驚きを添えて。世界観の創り方に癖があり過ぎるって。『糸は白い、糸は赤い』はキノコ図鑑片手に読んだよ。用意した方が絶対に良い。シイノトモシビタケにしようかなぁ。基本的に短篇なんですけど、『あるいは脂肪でいっぱいの宇宙』と『宇宙の中心でIを叫んだワタシ』は連作にもなっていてね。でも連作である必要性も無い不思議。そもそも、全話不思議なんだよ。表題作の紅茶の淹れ方部が佳き( ¨̮ )。2024/07/21
hiace9000
147
冒頭『糸は赤い、糸は白い』。前思春期に訪れる違和感の浸食を、脳への菌類植菌によって得られる"マイコパシー"がスタンダード化した世界の、幸福と不穏のアンバランスに重ね合わせ描く。七短編の軽みと深み、ユートピアの中の異物感や怪奇、笑いと悲哀の絶妙バランスも独特の味わい。最後に置かれた表題作は一文目で完全に掴まれ没入。緩やかな滅びと新たな再生の旅はドラマとしても秀逸。科学満載のSF作品ではない。だが未知の世界線に足を踏み入れ、壮大な空間的広がりや時空の流れに身を委ねる心地よさは、やはり魅力的本格SFなのである。2025/03/03
アキ
102
池澤夏樹を父に持ち、声優として仕事をし、第20代日本SF作家クラブ会長の経歴もあるが、ここに納められた7つの短編は、どれも軽々としていて、宇宙や深海など想像の世界が広がっています。特にキノコの胞子と菌糸を人と人との関係性に転化させた「糸は赤い、糸は白い」が印象に残った。舞台がチリの砂漠にある天文台の「いつか土漠に雨の降る」と、叔母が空から流れたのは、とても秋晴れの日だった、で始まる「わたしは孤独な星のように」が好みでした。色々な経験を経てSFを書かれるようになった著者でしょうから、今後の作品も楽しみです。2024/08/14
阿部義彦
47
第20代日本SF作家クラブ会長を無事に勤めた池澤春菜さんの初の小説です。声優としての春菜さんに関する知識は皆無で別に知りたいとも思わないジイジです。でもSF者としての彼女は大好きで漫画家のCOCOさんとの共著のエッセイは大切に2冊とも持っております。この本まず装丁が凝ってて素敵です。早川デフォルトのツルツルカバーでは無くエンボス加工のザラザラで蒼く浮き上がるキノコ達。全7編で百合有り、ハチャメチャユーモア有り、どれも楽しめた。好きなのは「いつか土漠に雨のふる」で小松左京みたいな思弁SF。父に負けるな!2024/06/01
東谷くまみ
46
うーん、やっぱり私はSFというジャンルが苦手なのかも😂短編6編中、好みだったのは「糸は赤い、糸は白い」、表題作「わたしは孤独な星のように」の2編。糸は赤い~の方は大好きなきのこ文学。しらしらさりさりくちくち…きのこの胞子が飛び立ち、菌糸が伸びる音をこんなに素敵な擬音で表してくれるその感性が好き❤️自分にも相手にも永遠なんてあるのか悩む、若さがキラキラ眩しい青春の物語でもある🍄表題作は、「死ぬ」ことを本当の意味で理解した時に落ちる絶望と悲しみのポケットの描写があまりにリアルで、すごく共感した。2024/08/20