出版社内容情報
ヴィクトリアは17年間なにも選べなかった。家事と農作業に明け暮れ、近所の川がどんな景色に繋がるかも知らない。だが、流れ者の青年ウィルと出会った。反対する家族に嘘をつき、逢瀬を選んだ彼女。背後には悲劇が迫っていた。喪失と再生を描く米国の感動作
内容説明
1948年、コロラド州アイオラ。ヴィクトリアは17年間、家と農園の外にほとんど出たことがなかった。母を早くに亡くし、桃農家の父と叔父、弟のために家事をこなすだけで日々は過ぎていく。そんな彼女の人生が突然変わる。謎めいた青年ウィルと出会ったのだ。彼は故郷をもたず、各地を放浪しているという。自由な彼といるとき、ヴィクトリアは自分も変わったように感じた。だが、町の人々はよそ者を疎んだ。それでも、ヴィクトリアはウィルを選ぶ。初めて父に嘘をついて、逢瀬を重ねる。だが、背後には悲劇が迫っていた―。大切なものを失いながらも、自分の道を進み、再生を遂げる女性の姿を描く感動作。アメリカ、イギリス、ドイツなどで続々とベストセラーリスト入りした、米国作家のデビュー長篇小説。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
pohcho
61
1940年代アメリカ、コロラド州。17歳のヴィクトリアは母を亡くして以来、桃農家の父と戦争で片足を失った叔父、問題児の弟のために家事を担っていた。謎めいた青年・ウィルに出会い恋をしたことで、彼女の生活は大きく変わるが、やがて悲劇が・・。と、ここまではわりとありがちなのだがその後は思ってもみないような広がりのある物語だった。女性が一人で生きていくということ、その大きな代償。ダムに沈んだ故郷の村。二人の母親と二人の息子。自然描写がとても美しく、喪失を抱えた女性達が力を合わせて生きようとする姿には勇気づけられた2024/07/24
がらくたどん
59
1948年日本では第二次大戦の敗戦国として東京裁判に伴い合衆国「指導」下で戦前からの「非民主的」価値観の改革が進められていた頃、アメリカのコロラド川に沿った桃農家の初心な少女が恋をした。女親を亡くし唯一の「女性」として家事の一切を担って来た従順な少女が一目ぼれしたのは流れ者の先住民青年。初恋の高揚と根強い人種差別による突然の理不尽な瓦解。繋がれた小さな命。世界に放たれた国としての輝きの内側で少女はためらいながらすべての水が交わる場所へと流れていく。少女が辿った同じ20年を描いたもう一つの物語が効いている♪2024/12/10
ヘラジカ
47
本国では『ザリガニの鳴くところ』が引き合いに出されており、かの作品があまり好きではない自分には合うか分からなかったが、滑らかな語りでストレスなくあっという間に読むことが出来た。肝心要のウィル・ムーンの人物造形が薄いこと(人種は違えどマジカル・ニグロに近いのでは?)が気になるが、落ち着いた物語のなかでも感情の起伏は大きく、読み応えも十分であった。特に第四章が良い。厚みで言えばこちらの章がメインと言っても差し支えないのではないか。やはり『ザリガニ~』が好きな人は好きな作品だと思う。2024/05/03
ぽてち
38
1948年、17歳の少女ヴィクトリアは、運命の相手ウィルと出会う。たちまち恋に落ちる2人だったが、家族も社会もそんな2人を許さなかった。ウィルは身を隠し、ヴィクトリアは嘘をついて逢瀬を重ねる。だが……。ヴィクトリアの“喪失と再生”を23年という時間で描いた作品だ。12歳で母親を亡くしてから、大切なものを次々と失っていくヴィクトリア。だが、ウィルが言った「川が流れるように」という言葉を胸に、絶望に打ちひしがれることなく強く生きていく。最初はありがちな恋愛話かと思ったが、もっと大きな“愛”を描いた作品だった。2024/07/16
星落秋風五丈原
22
『この村にとどまる』は、北イタリアチロル地方で、実際にダムに沈んだ地域に住んでいた人たちの物語だった。本編もまた、コロラドダム建設のために、水底に沈むことになった村に住む人たちの物語である。1948年、コロラド州アイオラ。ヴィクトリアは17年間、家と農園の外にほとんど出たことがなかった。母を早くに亡くし桃農家の父と叔父、弟のために、家族唯一の女性として、家事をこなすだけで日々は過ぎていく。女性特有の悩みが起きても、誰に相談することもできず弟は酔っ払いでろくでなし。叔父はベトナム戦争に行ってすっかり変わる。2024/07/01