出版社内容情報
1944年、ナチス体制下のドイツ。父を処刑されて居場所をなくした少年ヴェルナーは、体制に抵抗しヒトラー・ユーゲントに戦いを挑むエーデルヴァイス海賊団の少年少女に出会う。やがて市内に敷設された線路の先に強制収容所を目撃した、彼らのとった行動とは?──本屋大賞受賞第一作。
内容説明
一九四四年、ヒトラーによるナチ体制下のドイツ。密告により父を処刑され、居場所をなくしていた少年ヴェルナーは、エーデルヴァイス海賊団を名乗るエルフリーデとレオンハルトに出会う。彼らは、愛国心を煽り自由を奪う体制に反抗し、ヒトラー・ユーゲントにたびたび戦いを挑んでいた少年少女だった。ヴェルナーらはやがて、市内に敷設されたレールに不審を抱き、線路を辿る。その果てで「究極の悪」を目撃した彼らのとった行動とは。差別や分断が渦巻く世界での生き方を問う、歴史青春小説。
著者等紹介
逢坂冬馬[アイサカトウマ]
1985年、埼玉県生まれ。明治学院大学国際学部国際学科卒。2021年、『同志少女よ、敵を撃て』で第11回アガサ・クリスティー賞を受賞しデビュー。同作で2022年本屋大賞、第9回高校生直木賞を受賞した(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
starbro
466
逢坂 冬馬、2作目です。デビュー作にして本屋大賞受賞作『同志少女よ、敵を撃て』に続く第二長篇ということで読みました。ナチス体制に対抗するレジスタンス、エーデルヴァイス海賊団の少年少女青春譚、興味深く読みましたが、処女作が凄過ぎたので、平凡な作品に感じられました。残念、次作に期待です。 https://www.hayakawa-online.co.jp/shopdetail/000000015611/2023/11/20
パトラッシュ
445
ヒトラー独裁下のナチスドイツでも、服従を強いる体制に反発する若者はいた。海賊を自称した彼らが故郷に強制収容所が開設されたと知り、妨害しようと立ち上がる。敗色濃厚な大戦末期で彼らを黙認して戦犯扱いを免れようと図る大人の狡さも描かれ、敗戦によっても理想の敗北と現実主義者が勝利する苦々しい結末に終わる。ただ旧ソ連や中国、北朝鮮での反体制派取り締まりの苛酷さに比べ、ナチスは相当甘かったとの印象は拭えない。前作のような殺し殺されの容赦ない戦争の描写もなく、エンタメとして成立してはいるが今ひとつ迫力に欠けてしまった。2023/11/21
青乃108号
434
「同志少女よ、敵を撃て」でデビューした作家の2作目。1作目はそのタイトル、装丁のビジュアル、そして内容が見事に一体となって結実した傑作であったと思う。比べてこの2作目、タイトルは今一意味不明であり、尚且つ装丁のセンスが壊滅的に悪い。書店で平積みを見ても手に取ろうと思わせない。そして内容である。第二次大戦末期のドイツの、ある地域の若者達の物語はドラマチックであり感動的ではあるが、その文章はいささか説明過多であり全編に渡ってくどさを感じさせる。言いたい事は判るがもっと端的に、シンプルに語って欲しかった。残念。2024/04/02
修一朗
356
’同志少女よ銃を撃て’では凄惨な市街戦スターリングラードの戦いについて知った。今度は全体主義体制での洗脳組織ヒトラーユーゲントに対抗して自由を望んだ集団エーデルヴァイス海賊団だ。全体主義体制下ではマイノリティが抑圧され居場所を奪われる。体制にすり寄らなかった人たちの歴史に目が開かれる思いだ。ロマ人を知っている日本人はどのぐらいいるだろうか?それでいてやらかすことは痛快。長延期信管を使った爆弾でトンネル・鉄橋をぶっ壊すなんて。自分探しのスタンド・バイ・ミーに対して,こっちは抑圧からの解放。今月のベスト。2024/06/16
stobe1904
345
【ナチスに抵抗する若者たち】作中作の形式を取った歴史小説だが、ナチスの究極の悪に立ち向かう若者たちの切ない戦いに心を打たれる。歌う海賊になるか、歌わない住民になるか、自分の生き様を問われているような感覚を覚える。前作の本屋大賞受賞作が素晴らしかったこともあり期待値が上がっていたが、見事に応えてくれた。読後の深い余韻にしばし呆然とする。★★★★★2025/04/16