出版社内容情報
ナッジとは、より良い行動を促すことであったが、スラッジとは、理性的な意思決定を妨げるような「悪いナッジ」を表す。ビザの申請や年金給付などの場面で、申請者にとって合理的な選択を阻むものが生じるのはなぜか。スラッジ発生の仕組みと削減について解説
内容説明
サブスクリプションを解約するのに、途方もなく時間と労力がかかる。医療給付や奨学金申請のための書類が膨大である。合理的な行動を阻む負のナッジ=スラッジとは。ナッジを世に広めた法学者による、「悪い行動経済学」入門。
目次
第1章 社会の前進を阻むスラッジ
第2章 スラッジの弊害
第3章 スラッジと「選択の設計」
第4章 スラッジの実例
第5章 スラッジが必要な理由
第6章 スラッジ監査
第7章 一番大切な資源
著者等紹介
サンスティーン,キャス・R.[サンスティーン,キャスR.] [Sunstein,Cass R.]
1954年生まれ、ハーバード大学ロースクール教授。専門は憲法、法哲学、行動経済学など多岐におよぶ。オバマ政権では行政管理予算局の情報政策および規制政策担当官を務め、またバイデン政権では国土安全保障省の上級参事官に任命される。リチャード・セイラーとの共著『実践 行動経済学』は全米ベストセラーを記録
土方奈美[ヒジカタナミ]
翻訳家。日本経済新聞記者を経て独立(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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更紗蝦
30
スラッジとは「人々が何かを手に入れようとするときにそれを邪魔立てする、摩擦のようなもの」であり、典型的なのは、「書類作成などの行政手続き」です。困難な手続きは、最も支援を必要としている人ばかりをふるい落とすように作用するので、突き詰めればそれは「命の問題」ということになります。アメリカ政府はコロナ・パンデミックの対応の一環としてスラッジの撲滅を進めましたが、日本政府は撲滅どころか目に見えて増やす方向性に舵を切っており、それはマイナンバーやインボイスのごり押しという形で、現在進行形で突き進んでいます。2023/02/28
izw
9
著者は、ナッジを一般に広めた一人で、オバマ政権時代にホワイト・ハウスの情報・規制問題室(OIRA)の室長を務め、様々な分野の規制のあり方を監視した。元々書類作成負担削減のために創設された組織で、書類作成負担削減が重要な課題だが、取り組み始めたのが任期終了間際だったので十分に対応できず悔やんでいる。その後スラッジの弊害について学び、本書執筆に至った。スラッジは、ほとんど有害で無くすべき対象であるが、好ましくない決断についてはスラッジによって再考を促すことに役立つ。スラッジとナッジの有効活用は重要である。2023/05/26
naobana2
5
助成金申請の面倒臭さとか、なんでそんな非合理的なものが出来上がるのか考える機会に。2024/04/13
ふら〜
5
学問としては行動経済学の範疇にはいるのであろうか。ぬかるみ、泥濘を表すスラッジをキーワードに、さまざまな手続に内在するめんどくさい仕様(それによってなんらかの申請や後続を諦めてしまうような類のもの)は悪であるという主張。こういう発想はなるほど理解できる。公共政策の領域ではなんらか新規施策をする際は不公平感をできるだけ見えなくすることが求められていると感じるが、このスラッジという概念を優先順位高い所に置いた際の政策決定というのは興味深い。欧米スタンダードになり得る考え方は頭に入れておくに越したことはない。2023/03/08
keitakenny
1
単純に「ナッジ」が良くて、「スラッジ」が悪いわけではない ただ、比率的に不快・不理解な事柄にナッジが潜んでいる事が多い それが意図しない事ならば、容易く改善できる方法が出てくる それを行わない場合には、故意に仕組まれていると見るべきだろう スラッジ監査をぜひとも役所に広めてほしい2023/08/26