出版社内容情報
「全世界の人々が同時に発する悲鳴」の録音を目指すハリウッドの音響技師ミッツィ、児童ポルノサイトで行方不明の娘を探し続けるフォスター。2人の狂妄が陰謀の国アメリカに最悪の事件を起こす――『ファイト・クラブ』の著者が2020年代の世界へと捧げる爆弾
内容説明
ミッツィ・アイヴズは音響効果技師だ。彼女が作り出す恐怖の映画音声は、まるで本当に人間を拷問しているかのような迫力を持っている。ゲイツ・フォスターは行方不明になった娘を探す父親だ。手がかりを求めてダークウェブをめぐり、児童ポルノへの憎悪をたぎらせている。二人の物語が交錯するとき、ハリウッドに史上最悪の惨事が訪れる―『ファイト・クラブ』のパラニュークが二〇二〇年代の世界へ捧げる傑作。
著者等紹介
パラニューク,チャック[パラニューク,チャック] [Palahniuk,Chuck]
1962年2月21日、米ワシントン州パスコ生まれ。オレゴン大学でジャーナリズムを学んだのち、整備士として働きながら1996年に『ファイト・クラブ』を発表。同作は1999年にデヴィッド・フィンチャー監督とブラッド・ピット×エドワード・ノートン主演で映画化され、DVD版が世界で大ヒットしてカルト的な人気作品となった。以降も発表される作品すべてがベストセラーを記録している
池田真紀子[イケダマキコ]
上智大学法学部国際関係法学科卒、英米文学翻訳家(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
R
59
一回さらっと読んだだけでは、よくわからないという印象で終わってしまった。叫び声というSEをめぐる話で、本当かどうかわからない映画蘊蓄みたいなのが凄い面白くて、それをめぐる謎の争いというか、経済戦争めいたものが新鮮でよかった。いくつかの事件が当然のようにつながっていき、そうだろうなと思うようになっていくんだが、それ以上の暴力が襲ってきて、文章から叫びが聞こえそうなほどだった。期待ではないが、思った通りに進むのに、そうだと誰も言ってくれない、そんな文章が不思議だった。2023/05/29
Vakira
52
この題名、直訳すると「音の創意」。画像は瞬間にそれを理解できる。しかし、音を理解するには時間が必要だ。音は時間と共に成立する。そして画像は平面であるのに対し、音は立体となり、空間を知る。音を支配する者は人の心を鷲掴む。パラちゃん初読み。ぶっ飛んでます。禁、子持ち親読。特に女の子をお持ちの親御さんは読まない方がいいと思います。ド変態・猟奇サイコパス物語。僕は思春期以前から江戸川乱歩で鍛えられたから大丈夫でしたが。でも、その世界の雰囲気は暗くないんです。日本の乱歩の様に陰的妖艶さはありません。2023/04/07
愛玉子
50
「あたしの仕事はきっかり同じタイミングで世界の全員に悲鳴を上げさせること」最高の悲鳴を創造することに取り憑かれた音響効果技師の女。十七年前に行方不明になった娘を探すため、夜ごとダークウェブで児童ポルノの映像を渉猟する父親。接点のなさそうな二人の人生が交錯し、惨劇を誘発する。「この世に一つでも"本物"といえるものはあるのだろうか?」何が本物で何が偽物か。いや、本物など元より存在せず、ワインで飲み下した錠剤が見せる幻覚なのか。大脳辺縁系が共鳴する、サイレンを聞いた犬のように、原始の叫びが抗い難く全身から迸る。2023/05/04
ヘラジカ
49
初パラニューク。成程、これは癖になりそうだ。ファンが多いのも頷ける。底抜けの暗黒が心胆寒からしむる怪作。ストーリーはまあ荒唐無稽。というかパラノイアが書いたような不条理な事象の連続なのだが、それが逆に”悪夢めいた生々しさ”という撞着語法的な世界を作り上げている。ジャンル分けするならノワール小説か。しかし、あまり類を見ない独特な作品だ。個人的には好みでも、小説としての質はまずまずな気もする。主役の一人ミッツィが語る雑学が面白かった。時間があれば初期の作品も読んでみたい。2023/01/24
Kano Ts
30
「こうならないでくれ」と思いながら読み進めて、その予想のさらに下を行く。現代にアップデートされたパラニュークの暴力に圧倒されます。なんでこんな嫌な世界に詳しいんですかね。流し読みを許さない、目をそらしたいけどくぎ付けにしてくる、そんな力のある作品でした。作風として現実と妄想の区別が複雑に入り混じるあたりはディック的な要素もあるのかもとふと思いました。ほかの作品も読みたい!もっと翻訳してくれ!2023/02/01