出版社内容情報
河南省の延津には、夢に現れて笑い話をせがむ"花二娘"の伝説があり、彼女を笑わせられない者は死んでしまうという。そんな延津で伝統劇『白蛇伝』を演じた三人の男女の運命が、花二娘の伝説と絡み合う。中国の茅盾文学賞作家が上質なユーモアで描く最新長篇
内容説明
河南省延津には“花二娘”の言い伝えがある。花二娘はかれこれ三千年以上生きていて延津人の夢に現れて笑い話をせがむが、彼女を笑わせられない者は死んでしまうという。そのため人々はかならず笑い話を用意して眠る。そんな延津で、ある苦難を経験した父子がいた。喧嘩、離婚、裏切り、死―すべてが笑い話になるわけではない人生で、“笑い”が持つ力とは何か。花二娘に運命を翻弄される延津人の物語からユーモアの本質を問う、中国最高峰の茅盾賞受賞作家の最新作。
著者等紹介
劉震雲[リュウチェンユン]
漢族、河南延津人、北京大学中文系卒。中国人民大学文学院教授。2011年に第七作目となる長篇小説『一句頂一万句』で中国文学界で最も栄誉がある賞の一つである茅盾文学賞を受賞。現在中国で、莫言、閻連科、余華などと並んで称される作家である。また、2018年には、フランス文化省よりフランス共和国芸術文化勲章シュヴァリエを授与されるなど、世界的にも評価の高い作家である
水野衛子[ミズノエイコ]
1958年、東京都生まれ。慶應義塾大学文学部文学科中国文学専攻卒(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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星落秋風五丈原
31
一日三秋とは、一日顔を合わせないだけで、三年も過ぎ去ったような気がするーそれほどに相手に対する情愛が強い例である。河南省延津に伝わる"花二娘"の、相手に恋焦がれる気持ちがまさにそうだ。長い間花二郎を待っていたが、待てど暮らせど戻ってこない。待っている間に川・雁・水に「あなたたちは変わらなくていいわね」と声をかけるが、皆以前の彼等とは違うことを知る。皆に笑われ、人を待つことが笑い話になったと知った花二娘は山になり、夢に現れて笑い話をせがむようになる。彼女がする笑い話はいつも同じだ。2023/02/03
よっち
25
河南省の延津にある、夢に現れて笑い話をせがむ花二娘の伝説。伝統劇『白蛇伝』を演じた三人の男女の運命が、その伝説と絡み合う物語。劇団の役者だった李延生と陳長傑、女優の桜桃の複雑な三角関係からの関係の変化。武漢に移った長傑に会いに行くことで受け継がれた思いがあって、子供世代にもストーリーが移ってゆくなかなか壮大なスケールの物語でしたけど、全てが笑いになるわけではない人生中で、笑いが持つ力を考えさせられる内容で、日本人とはまた少し違った考え方だったり、それでもさくさく読ませてしまう圧巻のストーリーは流石でした。2023/01/30
スイ
14
いい小説を読んだなぁ…。 著者の作品を読むのは初めてで、解説でこれまではリアリズム小説ばかりだったと知って仰天するほど、自然なマジックリアリズム小説だった。 三部構成のそれぞれで個人に焦点を当てているけれど、その個人の後ろに積み重なる数多の人生が感じられ、大河の流れを眺めているようだった。 読み終わって数日経っても、まだ余韻に浸っている。 再読したい。2023/04/09
さとうしん
10
夢の中で笑い話を請う花二娘の伝説が色濃く残る河南延津。この地で白蛇伝を演じる三人の男女の役者の物語から話が始まり、更にその息子の世代へと話が移っていく。テーマも「伏線」も何もあったもんではないが、話に勢いがあり、とにかく読ませる。要するに様々な人生の悲哀が詰め込まれた小説ということになるだろうが、そんな陳腐な言葉でまとめたくないという気持ちにさせられる。2023/01/09
まこ
7
読み終わった後に最初に戻ると、明亮の半生のどこまでが真実で、何処から著者の創作なんだろう。明亮の引越しやお金を得る理由にファンタジーの要素を取り入れて現実との境を曖昧にしてる。芝居が廃れてテレビが台頭し、後半にはスマホも登場する時間の流れが現実なのに夢みたい。2023/06/04
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