出版社内容情報
少年ダビードはシモンとイネスの庇護のもと、言葉を学び、友を作った。犬のボリバルも健在だ。やがて少年は七歳になり、バレエスクールへ入学する。ダンスシューズを履いた彼は、徐々に大人の世界の裏を知る――成長とは? 親とは? クッツェーの新境地!
内容説明
ノビージャの街を捨て、田舎町に逃れてきたダビード、シモン、イネス、そして犬のボリバル。シモンとイネスは農園に住み込みの仕事を見つけ、ダビードとボリバルもそこに暮らす。だが、もうじき7歳になるダビードの質問攻めにシモンは辟易していた。ダビードもシモンの返答に満足せず…。ダビードは、農園のオーナーである三姉妹の勧めで、ダンスアカデミーに入学する。少年はシモンとの距離を置くために寄宿生になりたいと言い出すが…。『イエスの幼子時代』続篇。
著者等紹介
クッツェー,J.M.[クッツェー,J.M.] [Coetzee,J.M.]
1940年、南アフリカ・ケープタウン生まれ。1983年の『マイケル・K』と99年の『恥辱』(ハヤカワepi文庫)で英国最高峰のブッカー賞を史上初の2回受賞。2003年にノーベル文学賞に輝く
鴻巣友季子[コウノスユキコ]
お茶の水女子大学大学院修士課程英文学専攻、英米文学翻訳家(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ケイ
121
ずいぶんとエキセントリックになったな。登場人物たちの名前のそれぞれが持つ意味を考えると、読み方に邪が入ってしまった。ドミトリーにアリョーシャ、マグダレーナ…。そして、妙に親切な立ち寄り先の人々に、存在自体が変な学校の奇天烈な教育の仕方。何度も帰ってくるドミトリーにはびっくり。ダビードに対するシモンの態度をどう思えるか?というところに、読み手が子供と接する態度があらわれるんじやないかという気がする。それにしても、名前が気になる。ダビード…、ダビデ? それじゃギリシャ神話だ。名前がカタカナなのがトリッキー。2020/05/02
ヘラジカ
47
前作での軽やかな筆運びはそのまま。しかし内容はより一層濃くなりどっしりとした印象を持つ。ダビード少年の小悪魔っぷりにも磨きがかかり、理路整然としながら何故か常に否定される感覚がつきまとうシモン老人の形振りなど、イライラ要素は健在。中盤以降は解説通りカミュやドストエフスキーのような味わいで、最新の現代文学というよりは古典文学を読んでいるようだった。未だキリストや聖書との相似点や繋がりは杳としてつかめず、さくさく読めて楽しめるのに感想を書くのは難しい。詳しい解説があるなら読みたいところ。2020/04/18
Vakira
37
この世には目に見えない力が存在する。僕らを地面に吸付ける引力。鉄を引き付けたり、電力を起こしたりする磁力。僕ら生き物の元となる生命。何が生命を動かしているのか。そして生命を継続するための食欲と性欲。この欲が無ければ物質も存在しない。酸素と水素がお互いに欲し、結合し、水が出来る。水の存在を欲の結果と考える登場人物の考えにMY琴線響く。イエスの幼子時代の続編。前作では題名の如く期待したダビードの覚醒やイエス的奇跡はなしで終了。前作を読んだのは4年前。父役シモン、ダビード、母役イネスのキャラはもう忘れてしまった2020/07/16
M H
27
前作のいきさつから舞台が変わっている。シモンたちの新しい生活が始まり、ダビードはダンススクールに入学するが…特に後半の展開は意図がわからず戸惑うことしきり。記憶が洗い流される世界の謎も明かされないまま。それでも余裕のある筆致が心地良く、何だかんだで成長している(というか前作ではわりとひどかった)シモンを見守る心境に。実はこのシリーズ、彼の成長小説なのか?次作は「イエスの死」。ダビードは10歳になるようだ。出たら絶対読む。2020/05/06
風に吹かれて
25
『イエスの幼子時代』の続編。孤児ダビードに出会ったシモンは義父役を務め、ダビードの母を探し当て三人で生きていたが、緩めの管理社会が親子を引き離そうとする。そのため、ノビージャを脱出。ここまでが前作。物語の世界は近未来らしい。どうやら集団忘却に襲われた社会らしいが、詳しい説明はない。それだけに読み手の自由な想像が作品を深めることになるのだと思う。 →2023/04/21