出版社内容情報
火星の古いコロニー、ラムスタービル。地球人が残した〈全地球情報機械〉を探索することが生き甲斐のナミブ・コマチは、火星人の寿命90歳を拒否する祖母に共感している自分に戸惑いつつ、子孫を残すこと=自らの性欲を自覚し、火星で初めての男児を産み落とす
内容説明
火星の古いコロニー、ラムスタービル。ビルマスターのナミブ・コマチは、地球人が残していった“全地球情報機械”を探索するのが生き甲斐だった。そんなある日コマチは、火星人の寿命九十歳を拒否して「死ぬまで生きたい」と言う祖母アユル・ナディに共感している自分に戸惑う。子孫を残すこと―自らの性欲を自覚したコマチは、火星で初めての男児ハンゼ・アーナクを産み落とす。それは、火星と地球をめぐる“わたし”と“いま”の相克のはじまりだった―神林長平、作家デビュー四十周年記念作品。
著者等紹介
神林長平[カンバヤシチョウヘイ]
1953年新潟県生まれ。1979年、第5回ハヤカワ・SFコンテスト佳作入選作「狐と踊れ」で作家デビュー。『敵は海賊・海賊版』『グッドラック 戦闘妖精・雪風』などの長短篇で、星雲賞を数多く受賞。1995年、『言壺』で第16回日本SF大賞を受賞した(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
とくけんちょ
51
火星を舞台に、未来の記憶?と私にはちょっとわかりにくい話でした。自分の今はいつ、ここはどこ、みたいな最後まで読みましたが、雰囲気はいい感じで伝わってきたのですが、物語の意味については、理解が進みませんでした。2019/11/23
かとめくん
22
地球から火星への移民を成功させるには女性のみで行う必要があった。彼女たちは数世代を経て火星人として進化していくのだが、特に時間の捉え方は地球人を凌ぐ新しい芽を産もうとしている。そんな中、ひとりの市長が男の子を欲し、産んだため火星社会に動揺が走る。結果、地球に支援を求めることになるのだが、物語は人類だけでなく地球を包む機械知性体や火星の先住知性体を巻き込んだ壮大な進化へのとば口を開いていく。2020/06/05
rosetta
21
★★★★☆最初は全く馴染めなかった。火星に移住した女性たちの世界で異端のリーダーナミブ・コマチはタブーとされてきた男子を産み、事故が起きた時にはそれまで頑なに拒否してきた地球からの救援を求める。この辺まではまるで絵が見えずバストアップだけで背景のないセリフだらけの漫画を読んでいるよう。しかしこの後ストーリーがほとんど展開しない様になってからがこの物語の肝だった。地球人類が頼りきる人工知能トーチ、人生のパートナーとする野生機械のタム、火星の砂と見える原生知性体。地球と火星が出会うことによる知性汚染。字数2019/09/12
りー
21
物語としては理解不能でした。いや、いくつか思ったことはあったので、とりあえずそれを書いてみると、今までの神林長平とは違う次元に踏み出した作品だった、ということ。イメージとしてはソラリスの海を思い出しました。肉体や実存の生々しさを感じる非常に有機的な世界観。「自己意識」は肉体との相互関係がなければならず、自己の複製は自己ではない、という解釈は今までの神林作品と違う・・・気がする。ダメだ。読みながら感じたことを言葉にできない。集合的無意識や、種としてのヒトの存続に関する問題など、多用な提案がされていたのに。2019/08/22
ふかborn
20
作者にとって新しい火星年代記なのか。神林長平の本って読む前に凄く覚悟がいるのよね~。既刊では「自分」とか「時間」とか「魂」とかの概念が、これでもかって程書かれている訳でさ、これを「神林三種の神器」と秘かに呼んでいるんだけど、こんがらがった説明は本作では感じなかったね。そもそも、地球人も火星人も信仰はあるが宗教がないので「魂」の認識が薄いのよ。ヒトと常にパートナーとなる「タム」との丁寧な対話で事態を十分に理解出来るという、どうした神林!と突っ込みたい優しさ。たまにファアッッと叫びたくなる不条理設定が楽しい。2019/11/05
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