冬の眠り

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  • サイズ B6判/ページ数 380p/高さ 20cm
  • 商品コード 9784152092687
  • NDC分類 933
  • Cコード C0097

出版社内容情報

切り出される神殿、水に沈む町、遠い死者――。若い夫妻が目にする喪失のかたち。世界的ベストセラー『儚い光』の著者の傑作文芸長篇

内容説明

1964年。結婚したばかりの夫婦がナイル川のハウスボートに住んでいた。アブ・シンベル神殿の移築工事に関わる技術者である夫エイヴァリー。植物を深く愛する妻ジーン。二人が出会ったのは、海路建設のため水が消えたカナダの川のほとりだった。壮麗な神殿が切り出される様子を見守りながら、二人はひそやかにお互いの記憶を語りあう。しかし、その絆は思いがけない悲劇に襲われた。カナダに帰国した後、距離をはかりかねた二人は別居を決める。そしてジーンが出会ったポーランド人の亡命画家が語る、戦時中のワルシャワの話は、ジーンとエイヴァリーをさらに遠ざけるように思われた―人の心身に訪れる変化を探訪し、緊密で詩情あふれる世界を描き上げたオレンジ賞受賞作家の傑作。

著者等紹介

マイクルズ,アン[マイクルズ,アン][Michaels,Anne]
1958年、カナダのオンタリオ州トロントに生まれる。第一詩集The Weight of Oranges(1986年)でコモンウェルス賞を受賞。第二詩集Miner’s Pond(1991年)でカナダ作家協会賞を受賞。1996年に発表された長篇第一作『儚い光』(早川書房刊)はオレンジ賞をはじめ多数の文学賞を受賞し、ベストセラーとなった。トロント在住

黒原敏行[クロハラトシユキ]
1957年生、東京大学法学部卒、英米文学翻訳家(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

ぽち

10
あらすじ、プロットは他の項をご参照に…… 前半は細部の描写、均一になされていく描写が、土地の記憶を留めるために、後半は様々なできごとの描写、やはり均一に、がなされる、土地の記憶を浮かび上がらせる、開かれていく、いや、消失していく、という感覚のほうが近いか…… 場面の断片と無数の小さな営みが響きあって、静かな、美しい、波紋が重なり合う、土地の記憶、人の記憶2017/02/27

くみこ

9
1960年。ナイル川のダム建設によって、そっくりそのまま高台に移設される事になったアブ・シンベル神殿。その工事に携わる技術者エイヴァリーと、妻ジーンの物語です。夫婦は肉親を失い、ジーンと関わるルツィアンは祖国を失っています。"喪失感"を背景に、切り刻まれてその場から失くなる神殿、工事によって水の底へ沈む村、登場人物達の思索と心情が重層的に描かれます。歴史や自然についての学術的なモチーフが多く含まれる事もあって、読むのに時間がかかりました。読み応えある作品がお好み方にはおすすめ。2016/11/17

algon

7
やっと読み終えたというのが正直な感想。オンダーチェを思わせる詩的な文と様々な事象に対するユニークな観じ方は鈍い理解力と感性では全く頁が進まず思ったよりタフな読書になった。ナイルの神殿移築、セントローレンス川の海路、ワルシャワの復元を縦糸に、ジーンとエイヴァリー夫婦の死産がきっかけの亀裂、その後親しくなる男ルツィアンの癒されない苦悩などを横糸として物語を紡ぐ。解説に言う「詩的な思索」は魅力だが干からびた感性の自分としては観念的に過ぎると思った所が多々。しかしのめり込んで再読したくなる非凡な本だったとは思う。2024/02/22

よう

5
ごめんなさい、全然読めなかったです、というのが正直な思い。力不足だった。解説を読んで漸く、こういう読み方をするんだ、と少し驚き、たじろいだ。濃密すぎるくらいの詩的な雰囲気や所々に現れる言葉たちの羅列は、とても新鮮で楽しむことができたが、自分はただ上っ面だけを掬って、主題に手をかけることができなかったようだ。申し訳なさを感じた分だけ、いつもよりかなり変わった感想になる。喪失、癒し、欺瞞というテーマは凄く興味のあるものなのだが…。2013/03/03

amaneshino

4
喪失には縁取りはあるのに実体がない。そのことがとても怖い。人が息を飲む僅かな隙間に時間以外の何を名付けたらいい?会話が途切れて言葉を待つ僅かな逡巡は?『ドイツ軍による占領が終わった後、雪の積もった廃墟で一番最初に商売を始めた露店商は、花屋だ』…でも灰褐色の戦災の廃墟に手向けられたなんとも知れない鮮やかさが私には冷たかった。何かがここにはあったはずだ。ここには誰かが確かに住んでいた。そうやって空白を埋めていく衝動は抗いがたく、それでいて止めたとき、縁取りはあったのかなかったのか分からないことがとても怖い。2012/02/23

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