出版社内容情報
殺人に正義はあるか? 命に値段はつけられるか? 空前の「正義の哲学」ブームを呼んだサンデル教授の対話型人気講義。NHKで放送された全24コマのスクリプトに加え、安田講堂での講義も収録
海で漂流し飢えに苦しむ船乗りたちは、瀕死の少年を殺し、彼の肉で命をつないだ……。彼らの行為は道徳的に許されるのか? 莫大な寄付金と引き換えに資産家の子弟を大学に入学させるのは、正しいと言えるのか? これらの鋭い問いから浮かび上がる現代における「正義」とは?
私たちの暮らしにひそむ哲学の根源的なテーマを鮮やかに取り出し、古今の哲学者の思想を織り交ぜながら、刺激に満ちた議論が繰り広げられる。ハーバード大学史上屈指の人気を誇る名講義の書籍化。
上巻は、NHK教育テレビで放送された「ハーバード白熱教室」の第1回~6回まで、および2010年8月に行なわれた東京大学特別授業の前篇「イチローの年俸は高すぎる?」を収録。
*下巻はこちら
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
zero1
78
哲学は誰もが参加すべき現実問題。以前話題になったサンデル教授の講義。映像で見ると学生たちの目の輝きが印象的。一般論ではなく予習により思考が深く定言命法など難易度が高い。【トロッコ問題】をはじめベンサムやミルの功利主義、人権の根源、人命の値段など実に興味深い。人命はプライスレスだが【当たり前】ではなく思考の結果答えを出すことに意味がある。ビル・ゲイツとマイケル・ジョーダンは高い税金を払う義務がある?代理母や同意の意味、兵士を金で買えるかも問う。後半はイチローとオバマの収入など東大での講義も収録。下巻へ。2019/10/04
ntahima
47
学生との対話形式の講義録なので『正義の話』に比べると、話題が同じということもあり、格段に読み易い。但し、読み易いことと、理解しやすいことはイコールではない。対談集なんか読んでいると、分った気になるが実は分っていないことが多いので、できれば『正義の話』も読むことをお勧めする。学生が各哲学者の著作を読んで講義に臨む『白熱教室』に比べ、学生達が恐らくテレビを見て予習したであろう『東大特別授業』はハプニング性に欠ける嫌いもあるが、頭の中を整理するのには有用である。さて、問題は教授の考えが展開される筈の下巻である。2012/09/14
SOHSA
26
本書はハーバード大での講義における学生とのやり取りを本にしたもの。講義の臨場感がリアルに伝わってくる。内容は既読の「これからの正義の話をしよう」と同一ではあるが、講義形式である分、格段にわかりやすい。理解を深めるためにも「これからの〜」を読んだ人にもおすすめだと思う。2013/04/08
takayo@灯せ松明の火
25
面白い!サンデル教授の絶妙なナビに導かれて「考える」ということ自体がワクワクする。この講義終了後も学生同士で討論続けたり、あるいは個人独りで再度咀嚼しつづけている姿が自然に思い浮かぶ。そして、「正義」とは?子どもが幼い時は危険が『悪』そして「良い母親に見られる為に行っていること」はないだろうか!今までカントとか哲学なんて私の生活には全く皆無だったけど、具体例が効いているのか一生懸命、学生達とともに考え、そのことを楽しんでいる自分にとても満足(^^)v2011/05/22
Nobu A
24
「これからの『正義』の話をしよう」に続き、マイケル・サンデル著書2冊目。手に取って文庫化した前著の基だと気づく。しかし、本著は臨場感たっぷりの口語体。同じ出版会社で翻訳者が違う。不思議。ハーバードの学生の名前を次々と呼びながら白熱した議論が続く。前著の復習も兼ねて功利主義のジェレミー・ベンサム、人間の尊厳と定言的な権利と義務を尊重するイマヌエル・カント、正義と美徳を育み意義を問うアリストテレスの三人の哲学者の教えを現代問題にどう落とし込むか教えてくれる。複雑な社会問題の多くは哲学に答えがあるように思う。2021/05/16
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