内容説明
コナン・ドイルからT・J・パーカーまで原文付きの名書き出しをエッセーで味わう。
目次
シャーロック・ホームズにとっては、彼女はいつも「あの女」だ―アーサー・コナン・ドイル一八九一年「ボヘミア国王の醜聞」
レイモンドは耳をすました。やっぱり聞こえる。今度は二度続けて―モーリス・ルブラン一九〇九年『奇岩城』
明け方の銀色にたなびく光とそれに照り映えて緑にたなびく海の色の間に―G・K・チェスタートン一九一〇年「青い十字架」
オペラ座の怪人は実在した。それは長いあいだ信じられていたように―ガストン・ルルー一九一〇年『オペラ座の怪人』
フェラーズ夫人が亡くなったのは、九月十六日から十七日にかけての夜―アガサ・クリスティー一九二六年『アクロイド殺し』
パースンヴィルがポイズンヴィルと発音されるのを初めて小耳にはさんだのは―ダシール・ハメット一九二九年『赤い収穫』
ファイロ・ヴァンスはほんの偶然のことから「甲蟲」殺人事件に自ら乗り出した―S・S・ヴァン・ダイン一九三〇年『甲蟲殺人事件』
十月の七日、月曜日の朝のことである。フレンチ警部が初めてジョン・マギル卿の―F・W・クロフツ一九三〇年『マギル卿最後の旅』
その女性は、ドアを開けている秘書のそばを通り抜け、法律事務所を見回した―E・S・ガードナー一九三三年『怒りっぽい女』
管理人は咳払いをしてノックすると、手に持っていたデパートのカタログに―ジョルジュ・シムノン一九三三年『仕立て屋の恋』〔ほか〕
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
KAZOO
138
早川書房の出版物からまずミステリ分野で重要だと思われる作家100人を選んで、その作品の中から名書き出しを選ぶ仕事は評論家や訳者ということで楽しい本が出来上がっています。見開き2ページにその書き出しの文章とその作品あるいは作家についてのエッセイあるいは評論のような文章が収められています。書き出しが面白いと最初から確かに引き込まれますね。2015/12/17
ちどり
27
早川書房海外ミステリ・傑作・名作の冒頭部分が書かれている。本書のまず素晴らしい所は、英語の原文が書かれていること。作者の小プロフィール。そして作品を読んでいる前提で書かれている作品紹介(ネタバレなし)のため作品あらすじが書かれていないものが多い。ハヤカワ海外ミステリ好きを豪語している自分ですが、本書に紹介された100冊のうち22作品しか読んでいなくて恥ずかしいです。 2016/05/15
みつ
23
早川書房編集部が選んだ海外のミステリ作家100人について、35人の読み上手が各1篇の「名書き出し」に加え作品紹介を書くという体裁。自分の読んだ作品は29篇。別作品であれば読んだことのある作家が別に15人あった。ホームズものの最初の短篇「ボヘミア王の醜聞」に始まり『幻の女』『死の接吻』『長いお別れ』『ホッグ連続殺人』は、「やはり」の選定。原尞の序文にあるように「小説の書き出しの魅力が本当に理解できるようになるのは、読者がこの再読期に入ってから」というのもよくわかる。ヴァン・ダインだけ貶されているのには苦笑。2024/05/09
elf51@禅-NEKOMETAL
7
作家というのは最初の一文に相当のエネルギーをつぎ込むという。書き出しの一文と共にちょっとした作品解説になっている。海外ミステリは何を読んだらいいか迷う人はここから拾っていっても良いと思う。しかし,ミステリの書き出しは,「幻の女」/ウィリアム・アイリッシュ以上のものはないな。 『夜は若く。彼も若かった。が,夜の空気は甘いのに,彼の気分は苦かった』2006/12/20
lovemys
5
本を開いて初めのパラグラフを読むだけで、この本との相性が分かったりする。書き出しは本当に大事だと思う。書き出しの印象で、主人公のイメージが知らず知らずのうちに植え付けられたりして、あとでビックリすることもあったり。そんな技量に唸ったりもする。とても面白く読めた!読んだことのない本もたくさんで、今後読みたい本がまたまた増えてしまった。嬉しいけど(笑)原文が載っていたり、作者の経歴が載っていたりと、色々なところで楽しめた。書評をしているのが一人ではないので、色々な着眼点があるんだな、と面白かった。2017/10/12