内容説明
内戦下のエルサルバドルでアメリカの秘密工作を遂行中、エド・パーテインは上官の罠にはめられて、陸軍少佐の地位を失った。そして今、ワイオミング州の銃砲店に勤める彼のもとにその上官の一人が現われ、秘密を洩らすなと忠告して、裏から手をまわして彼の職を奪ってしまった。失職したパーテインは、VOMIT(軍情報部の裏切りによる犠牲者たち)という組織の友人から、新たな雇い主を紹介され、ロサンジェルスへ飛ぶ。雇い主はミリセント・アルトフォードという婦人で、彼女は政治資金調達のエキスパートだった。最近、自宅に保管してあった政治資金百二十万ドルが何者かに盗まれ、犯人を突き止めたいのだが、ボディガードになってほしいという。パーテインは仕事を引き受けた。だが、かつての上官たちが、彼の口を封じるべく、今度は暗殺者を差し向けてきた!クールなタッチで描き出す、欺瞞と殺人の渦巻く危険な世界。絶大な人気を誇りながら、惜しくもこの世を去った巨匠のサスペンス溢れる最後の長篇。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
harass
78
1996年このミス海外部門11位。元米陸軍少佐の主人公は、政治資金調達の達人である女性に雇われる。彼女が保管する120万ドルの資金を盗んだ犯人を突き止めようとするのだが、彼の過去と元上官たちの暗躍が…… どこかで読んだが著者はいうには、登場人物が勝手に動いて話ができていくとか。それゆえか、著者の作品は展開が予想外で、お約束を外していて、擦れっ枯らしの読者は唸ってしまう。また、魅力的な人物造形や会話が非常にうまい。おすすめ。2019/12/03
アイゼナハ@灯れ松明の火
26
ウィットの効いたセリフ回しでコン・ゲームを書かせたら、第一人者と個人的な評価の高いロス・トーマス。ハヤカワミステリでぽつぽつ新訳も出てるのですが、続かないなぁ…と思っていたので、図書館の書架で見つけた時の嬉しさといったら!醜聞に属する機密に触れたため軍を追われた主人公が、政治資金調達のエキスパートたる老婦人のボディーガードに雇われるところが物語の始まり。著者の最後の長編ということで、ややダイナミックさには欠けるかなとは思うものの、楽しく読ませていただきました。さて、欺かれてたのは誰だったのかな?2012/05/26
maja
23
銃器店員職を失った元陸軍少佐パーティン。彼はその後、退役軍人会を通じて富豪の問題解決の仕事を紹介されるのだが・・。遺作作品となる本作。個性的なあの人物の風の便りも出てくる。ちょっとしたきっかけで読み始めて離れがたくなったロス・トーマス。再読は然り、未読のもいい機会で続けて読めてとても楽しめた。名残惜しい。あと読める作品は、すでに数か月も保留のままで気になっている図書館取り寄せ中の「ポークチョッパー・・・」だけとなった。読めたらいいな! 2025/05/09
本の蟲
15
秘密工作任務中、上官の罠にはめられて失職して数年。互助組織〈軍情報部の裏切りによる犠牲者たち)の紹介で、政治資金調達のプロである婦人に雇われた元陸軍少佐エド・パーテイン。婦人に起こったトラブル調査を始めるエドに、かつての上官が口封じのための刺客を差し向けてきて…。寡聞にして最近まで知らなかった、玄人筋に人気のスパイ・ハードボイルド作家ロス・トーマス。本作も好きな要素盛沢山で「そうそう。こういうのでいいんだよ」と思っていたら遺作だった。今後も邦訳作品読破する予定だが、翻訳者がころころ変わるのだけが少し心配2024/09/20
duzzmundo
12
気がつけばロストーを読み返そう企画になってしまいました。初読み時は仕事が忙しかったのかあまり覚えておらず、またもや初読くらいの感じで読めました。おもしろかった。いまは亡き原寮さんが「ロストーの後の読書に耐えうる作家はいない」的なことを言っていましたが、なんかこのテイストからしばらく離れたくないというか。ものすごく肌馴染みがいい時期みたいなので、この機会に仕事が忙しい時期に読んじゃった他の作品を読み返そうと。そんなわけで次もロストーになりそうな予感。2023/09/19