内容説明
彼女は、恋愛で結ばれたエリート・ビジネスマンを夫に持つ高校教師。子供が二人いて、快適なアパルトマンに暮らしているが、結婚生活に失望している。いわゆる主婦の役割を期待されて、買い物、食事の支度、子供の世話、その他の家事に明け暮れるうち、生きる意欲や、外界への好奇心が、自分のなかで錆びついていくのを感じるしかない。自由と自立のなかの幸福を志向していたはずなのに、そういう状況にはまり込んでしまうとは。自らの軌跡をたどって、彼女は、幼少時、思春期、学生時代、恋愛の時期、結婚後を語る―「女の子」として、「女性」として、どう生きてきたかを語る。『シンプルな情熱』三部作で話題を呼んだフランス文学界注目の女性作家が、自立への意欲と結婚生活への失望を描く、自伝的小説。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
まふ
70
庶民階級に生まれた利発な女の子が周囲の環境から自意識を高め、勉学を志すとともに恋を経験して成長する。大学に入り、学生と同棲をし結婚をする。子供が生まれ、気の利かぬ夫との家庭生活の中、何とか家庭・育児を両立させながら教員資格を取り中学、高校で文学を教える。二人目の子供が生まれ描いていた自分の夢が完全に破れ「凍りついた女」となる、という筋立て。独特の書きぶりでこれを「テクスト」と自身はいうそうだ。様々な感情の起伏を抑えて幾分かの皮肉の味を盛り込みつつ淡々と綴るその筆致はこの作者の非凡さを窺わせる。2022/12/08
キムチ27
63
初めて受賞で知った作家ながら、当作で4番目の邦訳。と言っても30年弱前の刊行。仏での刊行は1981.筆者40歳の脂がのり切っている時間。それを感じさせる 草書、饒舌体。こういった文を書く方は情熱をビンビン伝えてくる。句読点はあるけど改行が無い。でも読み易いので1時間余で楽しめた。結婚生活への失望と危機・「結婚のスタート時は男と女~子を産み 育て父と母になると【エリート社員の妻 凍りついた女】そんなメッセージ。仏女性を一括りに出来ないように 日本女性もそれは無理。でもパリの街角でのインタビューに応じる女性2022/10/18
haruka
24
素晴らしかった。この時ノーベル賞を獲っていてもおかしくないくらい。自立した賢い女性が恋愛して結婚したら子育てに追われて夢破れていたというあらすじから、単なるフェミニズム的体験談かと思っていたら違った。もっと深い。「自分で選んだように見えること」が最悪なのだ。抗っても抗っても社会からの圧や風潮の波に押し戻される内に疲れてしまう。そして今いる場所の幸せに落ち着いていく。それは幸福でもあり諦めでもありいつのまにか凍りついていたという表現がまさに言い得て妙。人がその罠にはまり込んでしまう様を描いているのが凄い!2022/12/16
ハッカ飴
15
生物として女性に分けられ、女性を生きさせられた人、そのうえ結婚したり、子育てをしたりしりした人は本人の意識の強弱はあっても、著者のテキストは身につまされる部分が必ずあるはず。ここんところを男性性を生きている人にわかってほしいんだよな。それがフェミニズムなんじゃないかな。人間は哺乳類だから母乳保育は基本だろうけれど、そこを原点として育児がすべて女性にのしかかってくるのはやっぱりなにか「不平等」を感じる。子どもは母乳が終わったら、社会が育てるのがいいんじゃないか?2022/10/11
貴
14
「君は自由なんだぜ、何だかんだと言っても ! もちろん、食事の用意と子供の世話と家事を別にすれば」一人の若い女性の普通の結婚。家事や子育てに忙殺され、自分自身すら見失って「凍りついて」いく。2023/10/05