内容説明
ゲーテとは誰か?本当に平和を願う裏切り者なのか?ミサイル・システムの情報は、KGBが仕掛けた罠ではないのか?CIAも乗り出して英国情報部の調査が続く一方で、モスクワのバーリーは女性編集者カーチャと接触していた。カーチャはゲーテと元愛人同士だった。ゲーテはバーリーと会うためにレニングラードに来ることになり、バーリーはカーチャへの恋の芽生えを狭に秘めつつモスクワをたった。しかし、レニングラードでゲーテとの再会を果たし、さらに追加された情報を持って帰国したバーリーを待っていたのは、CIAの主導による厳しい尋問だった。ゴルバチョフ政権下のソ連を訪れ、サハロフ博士とも会見したジョン・ル・カレが平和への祈念をこめて激動の世界に放つ、新時代のスパイ小説。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Tetchy
94
自身がその身を措いていたことでル・カレのスパイ小説は最もリアルに諜報の世界に生きる人々を描いた小説だと云われるが、作品のカギを握るのは女性である。男の世界と云われる諜報の世界だが、計算高いエリートたちが作り上げていく堅牢な知謀計略に綻びをもたらすのは女性の影があれば十分なのだ。作中で何度も繰り返された教訓めいた一行、“スパイ活動とは待つことである”が意味するのは即ちスパイ活動とは女を待つことであるという意味かもしれない。ル・カレの作品を読むと世界の情報戦は実は女性が陰で動かしているように思えてならない。2023/08/10
冬薔薇
3
ペレストロイカ、グラスノスチの時代のソ連の社会生活がうかがえ、重大情報におけるアメリカの思惑、バーリーの愛とハリーの愛の対比、ネッドの苦悩など複雑に絡み合って、ロシアハウスを揺るがす大波乱へと向かう。古さを感じずいつも通り一気読みの面白さだった。ネッドへ宛てたバーリーの分厚い手紙の中身を知りたかった。2018/11/13