内容説明
1905年、26歳のアインシュタインはスイスのベルン特許局で勤務しながら、革命的な物理学理論の研究にうちこんでいた。それは、彼の生涯でももっとも輝かしい年といわれるほど重要な論文がつぎつぎに発表された一年だった。特殊相対性理論の完成を目前にしたアインシュタイン。だが彼は、夜ごと奇妙な夢に悩まされていた。夢に出てくる異世界では、時間が循環したり、静止したり、逆流したり、しゃっくりしたり、目に見える次元になったり…と、ありとあらゆる奇妙な様相を見せる。夢と現実が重なりあうとき、この世界までもが変容を余儀なくされていった。現役物理学者が専門的知識と比類なき詩情、卓抜な想像力を融合させて、アインシュタインが見たかもしれない数々の夢を流麗に描きあげ、英米読書界に衝撃を与えた話題の傑作。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
えか
8
特殊相対性理論を発表する直前のアインシュタインが観たかも知れない、時間に関する夢を、30のショートストーリーにした小説。この本を書くにあたって作者はおそらく30通りの異なる時間のパターンを考えたのだろうが、流石に30は多すぎたらしく、後半にいくに従い前の話と何が違うのか判らない無理やり感溢れる話が多くなる。2022/08/06
ジョジョ
4
流れるそれぞれの時間軸が水のよう。 一編一編がそれぞれ詩情たっぷり。2015/10/01
やまはるか
3
アインシュタインの夢に託して、手を加えることの出来ない時間を自在に変え、その時に世界がどんな姿を見せるか。不可能な実験が幾つか描かれている。「この世界は1907年9月26日に終わる。だれもがそれを知っている」世界の終末を描くこの話は人間の価値を試す物語として深く読んだ。しかし、考えてみればこれは不可能な実験ではない。世界が終ることを人々が信じるかは別としてあり得る話である。2019/02/04
ハルトライ
3
アインシュタインがこんな夢を見ていたかもしれない、というていで、様々に時間を思考実験してみた小説。哲学的な時間の話もあれば、相対性理論より更に後の物理学である、不確定性の話まで出てきたりしていて「アインシュタイン、絶対こんな夢見てるはずないだろ」と思うこと多しだが。ただ、思考実験としての面白さ、哲学としての面白さというのはちゃんと出ている。2014/06/23
bluesunset
3
読み終えるのに一ヶ月ほどかかりました。一気に読んでしまうのが、あまりにもったいなくて、1日にかみしめながら1エピソード読んでいたからです。宝石のような小説です。2013/07/24