内容説明
金子弥一郎は慶応3年に異例の若さで定町回(じょうまちまわ)り同心となったものの、幕府は瓦解して町奉行も消滅。新政府に仕官した同僚の誘いにも気が進まず、元岡っ引の始めた料理茶屋に居候を決め込んだが、ひょんな縁で佐幕派の「中外新聞」で種取り記者として探索にあたることに。元「八丁堀」同心の矜持を描く傑作長編。(講談社文庫)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ドナルド@灯れ松明の火
23
江戸から明治へと変わる時期の若き同心の生き様を描く。文章がうまく時代の移り変りも丁寧に描かれ弥一郎の痛快な活躍に一気読み。手の平の掴みぼくろが弥一郎の将来を暗示するエンディングも良かった。何度も言うが杉本さんの江戸言葉や情景描写が素晴らしい。お薦め2016/11/16
kaoriction@感想&本読みやや復活傾向
22
幕末から明治維新にかけての江戸・東京。 定町廻り同心だった金子弥一郎は、幕府の瓦解によりひょんな縁から佐幕派「中外新聞」で種取り記者として公にしてはならない任務を密かに遂行してゆく。旧幕府側にいた人々の維新後の運命。常に人に恵まれ、友に恵まれ、仕事にも恵まれ、やはり弥一郎の「つかみぼくろ」は幸運の印なんじゃないだろうかと思う。成尾との男の友情が清しいし、米八姐さんとの色恋沙汰はどこか微笑ましい。結婚しておやりよ、弥一郎さん。淡々とした語り口ながら明治という時代の流れや背景、歴史が巧みに描かれていると思う。2013/12/22
もんらっしぇ
17
幕末から明治期を時代背景に訳あってドロップアウトした元同心が主人公。かつての手下が経営する料理茶屋の居候となり自由な立場で己の道を探りつつ激動の時代と対峙することに。本書の魅力は捕物帳的な物語そのものの面白さもあるが登場人物の滑らかな江戸言葉による同心の普段の生活や付き合いの話、町方から迎えた嫁と武家の母との確執、町方商売の幕末から明治への移り変わりなど、分ってたつもりでそうでもない話が散りばめられ読んでいて小気味よい。不幸続きだった主人公に最後訪れるクライマックス。悲劇だけで終わらない幕切れもよし。 2020/02/02
ぶんぶん
15
【図書館】面白かった、江戸から明治に変わる動乱期の同心の姿を描く。 杉本氏の書き方は、時代の動きを活写する為実際の事件を描くが、そこで時代に動かされないで主人公の話しの流れを止めず書いている事だと思う。 実際の事件に捉われて本筋が外れる時代劇が多いが、そこが素晴らしいと思う。 同心から居候、新聞記者と変遷するが、大切な人の為、一人尽力を尽くす、何という矜持であろうか。 小気味の良い「江戸弁」が随所に散りばめられているのも心地良い。 著者がもう居ない事が淋しい・・・米八は粋だなあ。2019/12/07
デジ姫
9
我が久留米最後の藩主が久留米藩難事件として3章に登場。とんでもない藩主で恥ずかしい・・2016/12/22
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