内容説明
鳥の狩猟をはじめたばかりの中年男が、東京近郊の山中で密猟の天才少年と出会う。パチンコで見事にハトを射止める少年と狩猟に新たな生きがいを見出していく男が企てる一大犯罪計画をさわやかに描きあげる「密猟志願」など、シリアスで淡彩な青春小説から、ハードボイルドタッチのマンハント、童話のようなメルヘンまで、多彩な六つの物語で構成する異色の連作短篇集。新しいハードボイルドの書き手が〈鳥〉をめぐる男たちの夢と冒険を描く注目作。
目次
望遠
パッセンジャー
密猟志願
ホイッパー・ウィル
波の枕
デコイとブンタ
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
やも
85
第4回山本周五郎賞受賞作品。こんなに鳥が出てくる小説ははじめて読んだ。一羽ずつ画像検索しながら読むのも楽しい🐤あぁ、それにしても人間はちっぽけだ。鳥や自然は人間の必死さを置き去りにして、気高いままそこに在るだけだ。人間はその少しの恩恵を受けて感動させてもらえるだけで良かったのにな…。初老の男と孤独な少年の友情がグッとくる【密猟志願】鳥たちとの過去を思い出しながら海を漂流する男と亀の出会いの【波の枕】贋の鴨・デコイが語る夢と少年へのエールと別れが切ない【デコイとブンタ】が特にお気に入り🐢🦆★4.52022/06/14
ばりぼー
48
およそ20年ぶりの再読。川原で拾った石に鳥の絵を描いている男(作者の分身)と出会った「ぼく」が、石を見ているうちに夢幻の世界に迷い込む連作短編集。PR映画のラストシーンの撮影を任された若者が、幻のシベリヤ・オオハシシギを目撃する『望遠』、猟で猪母子を撃ち損ね仲間はずれにされた若者が、リョコウバトの大群に遭遇する『パッセンジャー』、パチンコや投げ縄でカモを獲る少年と、キャンピングカーで気ままに暮らす初老の男との友情物語『密漁志願』、脱獄囚を追う保安官一行の強さと優しさが溢れる『ホイッパー・ウィル』、→2017/02/23
クリママ
40
プロローグで始まる6編の短編。撃つだけの遊びの狩猟は受け入れられないが、ちゃんと食べるなら良しとしよう。そんな狩猟や野鳥に絡んだ物語。リョコウバトの物語はやはり酷く哀しいが、知らなければいけないことの一つだろう。その他の5編は、微笑ましいものもあり、心に残る作品集だ。自然の情景が語り過ぎない文章で描かれ、その中には男のロマンがある。それは羨ましくもあった。2017/03/28
よっしー
8
今から大体35年前の作品。最初は何となく読み進めたが、三話目の「密猟志願」から面白くなり始め、四話の「ホイッパー・ウィル」のバードボイルド感でかなり盛り上がった。短編全てが鳥が関係する物語であり、物語の前後と中間でプロローグ〜モノローグ〜エピローグと大枠が繋がっている。石に描かれた鳥に魅了された若者が、次々と6つの夢を見る構成であり、それぞれしつこくなく爽やかな余韻を残したエンディングが心地良い。2025/01/13
アナクマ
8
感想は文庫版に。2018/09/04