内容説明
世紀末のパリ、万国博、フレンチ・カンカン、メトロの開通―豊かな明日を信じた良き時代、ベル・エポック。シルクハットに片眼鏡、粋でシャイで陽気な皮肉屋アルセーヌ・ルパンは、まさに人々が人生を謳歌したこの時代の申し子だった。社会がスピードアップし、貴族からブルジョアへ富が動いた変換期に、彼はページの上で庶民の憧れを体現し、冒険譚をくりひろげた。近代的都市文化が花開いた〈ルパンの時代〉を車、ファッション、女性といった切り口から語る。
目次
1 ルパンの時代
2 ルパンとファッション
3 ルパンと自動車
4 ルパンと貴族
5 ルパンとロシアの美女
6 ルパンとグルメ
7 ルパンと印象派の画家
8 ルパンはレーシング・ドライヴァーだったか?
9 ルパンとマタハリ
10 ルパンの足跡
11 ルパンの隠れ家
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
26-ring-binder
3
モーリス・ルブランのルパン作品56本を読んでルパンの生まれた年を推定したり、急行列車を追い抜いたときの自動車の平均時速を計算してみたり、とにかくコアなファンが何をするか・・・また、いかにも楽しそうに真面目に分析しているところが「あり」だと思った。後年はスパイも暗躍するルパンシリーズが、次の世代の作家にインスピレーションになってフォーサイスやシェルダンが登場したのかもしれない。2022/11/15
左近
1
怪盗の代名詞たるアルセーヌ・ルパンが活躍した時代背景を解説。スピード狂で新し物好きのルパンなら、当時、隆盛を極めつつあった自動車レースに出場していたはず、というところから“推理”を始め、実在の某レーサーこそがルパンの変装だと突き止める(!)お遊びも。モーリス・ルブランは、現実の建物をルパンの隠れ家や敵の拠点として作中に登場させていたらしく、今でも、そのいくつかをパリで見られるとのこと。実に素晴らしい。ひょっとしたら、原典を読んだことのない人でも、十分に楽しめるんじゃないかと思われる読み物です。2015/10/20
rbyawa
0
a142、非常に軽い文体だったのだけれども、正直読んだ分量に相当する以上の情報量があったんじゃないのかなぁ、ということを思わないでもなく、ある意味でこの時代のこの国、フランスの独特な世界を知る入門書としても使えるのかなぁ、という気もしないでもなかった。私はどちらかというとフィクションとしてのモーリス・ルブランのルパン作品に興味があったのだけれども、この本は徹底して時代を反映した小説としての「ルパン」を扱った本で、これはこれでよかった。スポーツカーを駆るスピード狂の描写が非常に緻密なことはよくわかったw2010/11/27