内容説明
ドイツ軍機甲部隊がパリに迫るなか、ルイーズはまだ見ぬ兄の行方を求めて、レストランの店主ジュールとともにパリを脱出する。だが、ロワール方面へと向かう道は避難民であふれ…パリ陥落目前の1940年6月、脱走兵ガブリエルとラウール、機動憲兵隊曹長のフェルナンとその妻アリス、いかさま神父デジレなど、戦火にもてあそばれる人々による息もつかせぬ群像劇!『天国でまた会おう』『炎の色』に続く第3部堂々完結!
著者等紹介
ルメートル,ピエール[ルメートル,ピエール] [Lemaitre,Pierre]
1951年、パリ生まれの作家、脚本家。2006年にカミーユ・ヴェルーヴェン警部シリーズの第1作となる『悲しみのイレーヌ』でデビュー。2011年に発表したシリーズ第2作『その女アレックス』は、英国推理作家協会(CWA)賞インターナショナル・ダガー賞に輝いたほか、日本でミステリ・ランキング一位を独占し、ベストセラーとなった。2013年に発表した初の文芸作品である『天国でまた会おう』は、フランスで最も権威ある文学賞であるゴンクール賞およびCWA賞インターナショナル・ダガー賞を受賞
平岡敦[ヒラオカアツシ]
1955年生、早稲田大学文学部卒、中央大学大学院修士課程修了、フランス文学翻訳家、中央大学講師(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ヴェネツィア
312
下巻では、憲兵隊のフェルナン、そして詐欺師のデジレの路線が加わって、これまでの複線的な物語進行が複々線化される。さらには、ジュールの出番も増え、新たにアリスなども登場し、これまで以上に重層化が図られる。こうしてエクソダス(大脱出)のありさまが描かれていくのであるが、多数の人物たちを登場させ過ぎたためか、いささか緊迫感に欠けるようである。それはまた、デジレがトリックスターのような役割を果たしていることで、一層に助長されるように思われる。結局、私には一番ジンとくるのはエピローグだった。2023/07/27
starbro
228
全三部作、2,000頁弱、完読しました。フランスの戦時下の大河人間ドラマ、ミステリ的要素は、少なめです。読み応えはありますが、フランス人の歴史的バックグランドがあった方が理解しやすい気がしました。個人的には『その女アレックス』のようなミステリの方が好みです。 8月は、本書で読了です。2021/08/31
のぶ
87
下巻に入り、読み進むうちに忘れていた前二巻の内容がわずかだが蘇ってきた。「天国でまた会おう」の頃は、第一次世界大戦の時代で、ルイーズもまだ幼かった。そんなルイーズも30歳。本作では群像劇とはいうものの、物語はルイーズを中心に展開する。二次大戦が激しさを増し、ドイツ軍機甲部隊がパリに迫るなか、ルイーズはまだ見ぬ兄の行方を求めて、レストランの店主ジュールとともにパリを脱出する。しかし、ロワール方面へと向かう道は避難民であふれ、思わぬ運命がルイーズを待ち受ける事となる。単独でも楽しめる良くできた作品。2021/08/14
キムチ
60
19世紀に端を発した大河は1940年の独侵攻で頂点に。ルィーズ、ラウール&ガブリエル、フェルナン&アリス、最後まで正体不明のデジレを軸とした群像劇は今一つ乗り切れなく、共感を持てた人物が不在の感が強く淡々と幕を閉じた。この作品、若きDrが蒔いた種が下地となっており最後は見えない赤い糸が結ばれるっていう感じ。この時間は仏のその後を決定づけた重い内容が詰まっている。表題は下巻160㌻で描かれる逃げ伸びていく難民の表情に辛さが凝縮された空気を込めているのだろう。個人的には第一部が血沸き肉躍る感があり最高だった2023/10/05
空猫
58
後に教師になったルイーズは一人の老医師によって人生を暗転させられた。けれど'40年の仏国は、市井の人々も徴兵され、元来の軍人は政府の朝令暮改と軍の無謀な指示に翻弄され、子供たちが親を失うような混乱の時代だった…群像劇をここまで見事に描いてくれる作家は中々いまい。一人一人のキャラも素晴らしい。ともかく丸く収まりホッとした。愛した人と添えないのはなんと残酷な事なのだろう。それでも人は生きていかねばならないというのに。戦争の悲惨さを(それは「われら」人類の痛みでも)物語ってもいるが、究極の愛の物語とも言えよう。2021/08/31